ファーストミッドモーニング・かぜがたったので いきねば。
『ぴんぽんぱんぽーん!じゃじゃじゃーん!現在、11時11分11秒!イレブンナイツのお時間です!』
『お相手は、私イレブンナイツの広報担当、ミツミが担当していきます!』
『昼の部は…うーん、やっぱり昼は平和だねぇ。あ、いいことだよ!うんうん。』
『いやでも、何か放送しないと…そうだ!』
『昨日助けた男の子。気になるよねぇ。うん、私は気になるなぁ。』
『いやだってさぁ、あれはどう考えても脈ありだよねぇ!いやー、気になるよねー!』
『あ。再度ダメだった?あっそ。まぁあの顔じゃあ、そういうもんだよね』
『お、どうでもいい話はさておき、やっとお便りが届いたみたいだね』
『えーっと…ふむふむ。飛行機が落っこちそうで怖い!なるほど!』
『確かにねー。あんな鉄の塊のくせして空を飛ぼうってんだから、いやはや考えてみれば怖い怖い』
『よーし、リクエストにこたえて今日も行きましょう!イレェェェェブゥウウン…ナァァァァアアアイツ!!!』
飛行機は、嫌いだ。何が嫌かって、この棺桶に縛り付けられる感覚が大嫌いだ。
よりにもよって、修学旅行が南半球とは…最悪だ。長旅になる。
メンバーもメンバーだ。きゃぴきゃぴしたギャルが騒がしい。ただでさえ頭が痛いってのに。これだからああいう奴らは嫌いなんだ。
『シートベルトを着用し、うんだらかんだら~』
分かってる。分かってるから早くしてくれ。帰りもこの感覚を味わうんだぞ。さぁ、早く。
ぐっと目を瞑った。眠ってしまえば、起きたらまた母なる大地の上だろう。
はっと目が覚めた。期待して外を見ると、真っ暗な空の上だ。ああもう、どうしようもない。
「どうした、目がさめちゃった?」
隣に座るマナが話しかけてきた。彼女はのんびりと、映画鑑賞を楽しんでいた。
「アイリは飛行機、ダメだもんねぇ。こりゃしばらく眠れないかな?ウフフ」
私は答えない。静かに冷めた紅茶を飲む。しまった、カフェインでまた眠れない…
となりでマナが寝息を立て始めた。飛行機は嫌いだが、空の景色は嫌いではない。窓の外をずっと見ていた。すると、その窓に反射して、何人もの男が操縦席の方へと向かうのが見えた。
気になって前の方を見る。男たちは止まることなく機械的に歩いていく。嫌な予感がした。
機体が、突然激しく揺れた。破裂音が響く。機内に悲鳴が響き渡った。
『えー、当機は我々トロリステの虎が占領した。歯向かえば撃つぞー。静かにしてろよ』
日本語と英語でアナウンスが入る。本当に何なんだ今日は。厄日だ…
その時、隣のマナがテロリストに捕まった。コックピットの方に引っ張って行かれる。助けての声も出さない。助けようと少し伸ばした手も、銃口の前に体は固まったままだ。
「飛行機って…こわいね…」
突然、隣から声がした。真っ暗な機内で、不気味に白く光る、中世騎士の兜。
思わず、声が漏れた。運が良かったのか、テロリストには気づかれなかった。
「あ、あんたは何なの…!?」
囁き声で聞いてみる。
「んー…トオミだよ。だいじょうぶだよー。てろりすと、じゃないよー」
小さく両手を振ってくる。可愛げな仕草だが、恰好が怖すぎる。
「さぁて…おしごと、しないと」
そうつぶやくと、彼女は静かにタブレットを取り出した。青い光が周りを照らす。こいつ、バカなのか…
「何をしている」
小銃が突き付けられた。当たり前だ、テロリストの前で通信機器を取り出すとはどんな神経をしているんだ。
「おしごと」
「…フッ、いい度胸じゃないか。そのマスクも中々イケてるぜ?気に入ったよ」
「そう」
「つれないなぁ、お前殺されるのは怖くないのか?」
「ころされない」
「そうか、最後までいい度胸だ、死ね」
引き金を引いた、ああもう、ダメだ…!
『ぱんぱかぱしふぃっくー。イレブンナイツです』
突然、騎士面の少女の声が機内に響いた。それと共に、機内に照明が戻る。
テロリストは驚いた揚句、自分の足を撃ち抜いた。
「ぐああああっ…畜生貴様ああああぁぁっっ!!!」
「わたし、なにもしてない」
また、両手をふりふりと見せた。
『てろりすと、のみなさん』
『この飛行機は、わたしがこんとろーるをもらいました』
『あと、みなさんの電話もわたしのおもいどおりです』
そんな悠長なことを言っている間に、小銃を構えたテロリストたちが続々と集まってきました。
『あ、それともうひとつー』
彼女がす、と指を上げる。
するとどうだろう。テロリストたちの手から次々と、武器が落ちて行った。
『ただのはっかー、といっしょにしないでください。私は、お前たちのコントロールも奪っている』
突然、大人びた声になった。
『フフ、驚いたかね。あー、そういえば乗客のみなさんが危険だったな。それでは、みなさん、よい旅をお楽しみください』
機内を黒い影が駆け回り、乗客を吹き飛ばしていく。私も、その影に引っ張られて、あっというまに機外に飛び出た。
「ひ、ひえええええ!!!」
寒いのと高いのと暗いのと、とにかく恐ろしかった。だんだんと意識が薄らいでいくのが分かった。
機内に取り残されたテロリストたち。動こうとしても、自分の力で動けない。
「もう、機内アナウンスは必要ないな。改めて、初めまして。自殺志願者の方々」
テロリストは座席に座らされた。シートベルトをしっかりと締める。もう、一歩も自力で動くことができない。
「私は命を軽んじるものが大嫌いだ。他人のでも、自分のでも、まして他人の命を自分の意見のためにささげようなど、もっての外だ。ふざけるな」
「この飛行機はいつまでも飛び続けるぞ。我々が毎日給油してやろう。整備もしてやろう。飯も食わせてやる。お前たちはこの座席に縛られたままの人生を送る。高度1万フィートの棺桶の中で、その人生を悔やむがいい。」
そういうと彼女はてとてと歩いて行った。大きなバッグを背負い、ゴーグルをつけた。
「それでは諸君、元気でな。映画でも見て、余生を楽しめよ」
座席のスクリーンには、子供向けの映画が流れ始めた。
「ほら、ほらアイリ!着いたよ、よく寝てたね。念願のオーストラリア!いやー、太陽がまぶしいね!」
マナの元気な声で目覚めた。何かとんでもない夢を見ていた気がするが、外の景色を見て吹き飛んだ。
着いている。母なる大地。ああ、生きててよかった…
無事な到着を知らせるアナウンスが、機内に流れた。
『こほん、えーっと…とうきは、ただいまぶじにつきました。いじょうです。』
なんか、随分と適当なアナウンスだった気がする。