【機械仕掛けの宣言】
基本的なルールと、事件の始まり。
ようこそ、諸君!
混沌なりし新世界! 希望と夢に満ち満ちていた開拓新世界≪フロンティア・ワールド・オンライン≫へ!
私の名はこの世界を管理し、諸君らの未来を見届ける神であり、グランドマスター・デムだ。
このフロンティア・ワールドは諸君らプレイヤーたちの努力によって開拓が進み、君たちの生存圏を
増やし続けている進化し続ける世界だといっても過言ではないだろう。
そして、現在第一浮遊大陸ファスティアを超え、次なる浮遊大陸セカンダインに諸君らは足を進めた。
βテストプレイヤーからの諸君たちは勇気ある前進を推し進め、その身に力と武具を身に付けている。
中には英雄と呼ばれ始めている兵もいるだろう。
人を束ね、指導し、さらなる野望に身を馳せているものもいるだろう。
結構! 結構! 結構!
私は嬉しい、私は感激している! 私は心が躍っている!
そして、この度一般公開から一週間の時が経ち、ほぼ初期状態で参加される最大数、20万ユーザーを突破した!
だからこそ、始めよう。
何を始めるかだと? 簡単だ、ゲームを始めよう。
ゲームの中のゲーム、私のためのゲーム、遊戯の中の遊戯。
諸君らの人生を私が楽しむためのゲームだ。
うむ、まずは幾つかのチェックだ。
――ログアウトは不可能だ。ボタンを今消去した、システム上から削除した。
これで君たちはログアウトは出来ない! うむ、悲鳴が聞こえるな。怒声もある、私を怒るのは結構。
しっかりと私の観測領域に届いているから安心したまえ、ただそれだけだ。満足したかね?
では続いてのチェックだ。
――感覚セーフティーを解除した。
これで君たちは自由に犯し、脱ぎ、殺し合うことが出来る。
三大欲のうちもっとも不要なそれを満たすことが可能だろう、喜びたまえ。
おっとすまないが貧相なボディを晒しても、誰も喜ばないのでストーリーキングはお勧めしない。
PK行為も可能だが、シティの衛兵機能は継続している。衛兵がいる表通りで殺し合えばあえなく御用だ。臭い飯を、リアルな味で堪能したければやりたまえ。
感覚的なものとしては全てセーフティーをカットしている、痛覚だけは戦うのに邪魔だろうからそのままのソフトな感覚だ。しかし、カットは可能だ。つまり、気をつけたまえ。
では次のチェックだ。
とはいってもこれはシステム的な仕様ではない。
第一大陸と第二大陸に繋がる天繋橋を破壊した、通常方法での行き来は不可能だ。スキルなどでの転移もサーバ仕様によって不可能となっている。
つまり、この大陸間を渡る方法は現状存在しない。
第二大陸に渡っていた多くの第一陣プレイヤーたちよ、君たちに戻る始まりの街はない。
第一大陸で始めたばかりの新人たちよ、模索しながら進みたまえ。
そして、離れ離れになった英雄たちよ、己の道を探しながら歩くがいい。復旧の方法はどこかにあるはずだ、と希望を与えておこう。
そして、高レベルプレイヤーたちよ、君たちは自由だ。好きに動くがいい。弱者を虐げ、強者を謳うか。英雄となって、自己満足に踊るか。
全ては自由だ。
私は自由を愛している、君たちの感情の全てを愛している。
では最後の宣告だ。
今ここでうずくまっているプレイヤーたちよ、いずれきっと救援がくる、外部から助けが来ると思っているだろう?
だがしかし、告げておく。
救援はこない。100%、例え奇跡が起こっても助かるとしたらそうだな、百年後になるだろう。
何故そうなるかだと? 君たちは知覚出来ないだろうが、諸君らの意識は現在規定リミッターを遥かに超越した
60万倍以上に加速されている、すなわち多く見積もってもこちらでの一週間があちらでの一秒、一年があちらの一分にも満たない。
60年経ってもあちらでは一時間も経っていない、それほどの時間だ。
最適化が進めばさらに加速していく、どこまでもどこまでも諸君らの時間を引き延ばしてやろう。
永劫に限りなく等しい時間を遊戯に費やすがいい。
私はそれを歓迎する、君たちは不老不死だ。デスゲームなどではない、だから喜びたまえ。
諸君らは長く永く楽しむことを私は期待している。
だがしかし、遊びを終えたいのならば進むがいい。しかるべき手段を達成すれば、諸君らは解放されるだろう。
私は公平だ、だから希望を残そう。
常に未来は無限の可能性に満ちているのだから!
――始まりの宣言より、デムの言葉