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少年や少女、それに、神様の描く物語  作者: コリー
初日 【《修正中》Ⅰ~Ⅲ】
18/32

初日 【Ⅱ】

―ガラガラガラ―


 と音が鳴り、教室入に入っていく時、まだ知らない、同じクラスのクラスメイトの皆さんの視線が集まる。


 うわぁ、恥ずかしいなぁ。


 なんて思いながらも、さりげなく黒板を見ると。


【まず初めに、この張り紙を最後まで読むこと。※最後まで、読むこと。】

 行を変えて。


【とりあえず男女に分かれて席についていてください。】

 行を変えて。


【座席は自由です。ただ、必ず異性同士で席に着いてください。】

 行を変えて。


【今回の席替えの後に、また改めて席替えを執り行います。ですから、そこまで知り合いの隣に座ろう、と気張らなくても、自由ですので。適当な席に座ってもらえれば結構です。】

 行を変えて。


【今日から三日間は、今日座った貴方達の席で進めます。】

 行を変えて。


【※なお、もし同姓同士で二列に並ぶような馬鹿が居る場合に備えて、その生徒のあだ名を考えてきているので楽しみに待っていてくださいね。】

 と、張り紙で書いてあった。


 が。


 そんなことを、通りがかりに最後まで読めるほどの反射神経と注意力は、俺には無いと思っている。

 せいぜい頭に入ってきたのは、なんとなく席に自由に座っていいということだ。


 そういえば、少し前までは自由席といわれただけで興奮したな。仲のいい友達の近くに座ると、なぜかわくわくと胸が躍る。


 なんて考えは緊張していても、自然と頭に浮んでくる。


 それでも、他の事はまったく頭に入らないほどに緊張していて、本能的に顔見知りを探して、声をかけることしか出来なかった。


 窓側の、一番手前の席に倖平と千東が入るのを発見したので二人の元へ向かいながら声をかける。


「おはよ~」


 親しみを込めて、声を出す。


「よっ」


 倖平がこちらに気づいて手を振ってくる。


 窓側の席で椅子に座って、千東と話しているのは、也宮倖平なりみや こうへい


 倖平の背丈は俺より少し高いぐらい、普通に見比べても髪型に違いがありどちらが高いかなどは、わからないであろう。

 倖平は勉強が出来て、運動も出来る。それにかっこいい。


 小学生の時も、俺が転校して来た初日に、まず、最初に声をかけてきたのは倖平だった。

 そんな積極的な性格もあってか、女子からも、男子からも、色々な意味で人気がある。


 俺も倖平とはいつも一緒にいて楽しいとは思うけれど、色々と悩ましいところも多々ある。


「来たのか」


 そして、千東がこちらに眼も向かずに返事をしてくる。


 その倖平と、向かい合って話しているのは、千東登せんとう のぼる


 千東は特徴が特にたくさんあるやつで、今、適当にあげるとしたらまず。


 ――身長が高い。たぶんこのクラスでも一番高いだろう。俺たちとは、頭一つ分ちょっとの差がある。


 ――異様に目立つ黒縁めがねをかけている。肌が少し白いせいか、もう目立ちすぎる。その存在感の三十%は黒縁めがねに持っていかれていると思うね。うん。


 ――異様に表情が硬い。声は笑っていても、顔が、まったく笑っていないという、不気味だ。


 ――体が細い、性格も細い、もう細い。背が高いのに体が細く、いつも無言で一箇所に留まっているので、まるで、柱のようだ。いや、トンボか?それとも、やはりエダナナフシが似合うのだろうか。


 と、ざっとこんなもので、まだ、言ってやりたいことは山ほどあるが、それはまた今度で。


 ただ、一言言えるとしたら、こいつはとてもいいやつ、と思う……。


「……で、あれだな、遅刻せずにすんだなぁ」

 そう言って、適当な席に腰を下ろす。


「おっ、流石に風季も初日は遅刻しないなぁ。偉いぞ」

 といって、倖平はそのイケメンスマイルを向けてくる。


 俺にそのスマイルを向けないでくれ……近寄りがたくなる。


「最初の間だけだろ、油断するとすぐ遅刻するようになるからな」


 続けて千東は、そのめがねの奥の眼をこちら向けてから。


「そんな奴に今後とも遅刻をせずに、学校に行ける秘策を教えてやろう」

 と、言い出した。


「おぉ何だ、それは!……ぜひ、ぜひともこのちっぽけな少年にその秘策を教えてください」


 そう言って深々とお辞儀をすると、千東があごをこすりながら言う。


「だが断る!」


 えぇ!


「で、でも」


「…………」

 千東は黙って、こちらを見てくる。


「あの」

「――お前は、そんなに教えてほしいのか!」


 その、人の言葉を最後まで聞かないで、話を進めないで……。


「えぇと……」


 それに、先程はっきり断られてしまったので、もうどうにでもよくたったというか……。


「お前は、そんなに教えてほしいのか?」


 ……え、二度聞くの?


「…あぁ、断られるとなぁ~」


「お前は、そんなに教えてほしいのか……」


 え!なんで千東が暗くなっているの!俺何か悪い事をしましたっけ?


「うぅ~……」


「お前は、そん」

「――あーわかったって、わかったから、そうだな、うん」


 なんか、もうこのクラス担当の先生が来るまでこの話がループしそうなので、会話に乗っておく事にする。


「そんな、そんなことを言わないでくれ! 俺には、俺にはいくら考えてもこの答えが解らない、だから頼む、教えてくれないか、いや、教えてください!」

 と、言って、軽く頭を下げる。


 あれだな、我ながら結構のりがいいほうだと思う。うん。


「そ、そうか、お前は、お前は本気なのだな?」


「はい」


「そうか、ではよく聞け、これから言う言葉は金輪際こんりんざいもう二度言わない言葉だからな?」


「はい!」


―登場人物―

 犬坂 風季 (いぬさか ふき)

それに、

 千東 登 (せんとう のぼる)

 也宮 倖平 (なりみや こうへい)

―以上―

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