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少年や少女、それに、神様の描く物語  作者: コリー
入学式に寝てしまう人は必ずいると思います! 【《修正中》Ⅰ~Ⅱ】
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入学式に寝てしまう人は必ずいると思います! 【Ⅰ】

  書写 ―犬坂 風季―


 ……。暗闇の中、視線を感じた。


「寝ているな~」


 ……。誰だろう?


「あぁ、そうだな」


 …………。真っ暗なのに。


「起こそうか?」


 ………………。なぜ、視線を感じるのだろう?


「いや、ほっとけよ」


 ……。あれ。


「あぁそうだな」


 ………………。すごい思念を、感じる。


「あぁ、そうしとけ」


 ……。様な気がする。


「……」

 ……結局寝てしまったのか。


「おぉ、起きたか……」

 倖平の声が聞こえる。


「……ウゥーン、眠い」

 どのぐらい寝てしまったのやら……。


「なぁどのくらい」

「――在校生の、発表が、終わった所くらいだ」


「あぁそう。ありがとう。千東」


 少し間を空けて、続けて聞く。


「で、何分ぐらい?」

 すまん。入学式の進行予定なんて、まったく知らないもので……。


「千四百四十分ぐらいだ」


「へぇ~そう」

 それはすごいね!凄いね……。


「ごめんなさい……。で、倖平、結構どのくらい寝ていたかな、俺?」


「あぁ、在校生でかの有名な、青葉姉さんの発表を聞き逃してしまうくらい寝ていたな」


「えっ、それは残念だ……」

 もういいや…でも、結構寝てしまっていたのね……。そういうことだよね?


「まぁお前の事だからな、青葉さん知らないだろ」


「うぅ、まぁまぁ」

 と、いうより、なぜ倖平は在校生の名前を当たり前のように知っている!


「ほら、今発表しているのがその妹さんだ。まじめに聞いとけよ」


「あぁ、はい」


 俺は、渋々と誰かが何かを発表していると思うステージのほうへと、顔を向ける。


「――私はこれまで親が敷いてくれたレールを何の疑問も持たずに進んで参りました。

 しかし、この学校に入学し、今までとはまた違う新しい生活を送っていく中で、ぜひともこの学校で新しい知識と経験を身につけ、将来自分がなりたいものを必ず見つけたいと強く思うに至りました。」


 そこには、一人の少女がいた。


 その少女は、自分達と同い年とは思えない程に、何ていうか綺麗で、高嶺たかねの花って感じがした。

 綺麗な黒髪はひじの辺りまであり、その髪は荒れることなく綺麗に伸びきっている。

 少女の顔立ちは、同い年では比べ物にならないくらいに整っていて、何処かしら小夜李さんに似ているような気もする。


 そんな少女は、とてもにこやかに、淡々と、語っていた。


「私たちには無限の可能性がある、そう信じさせてくれる柔軟さと自由がこの学校にはあるように思います」


 しかし、よくこんな大勢の前で、あんなにはきはきとしゃべれるよな~。


 そんなことを思いながら、少女の事を、呆然と見ていると……。


 一瞬、その少女と目があう。


 少女は、その時、パッ、とさらに笑顔になった様な気がした。


 気のせいだろうか?


「うっ」


 それでも、なぜか気恥ずかしくて顔をそらしてしまった。


「人間として成長すると同時に将来の夢をみつけ『なりたい自分になるための階段を昇りはじめる』、という目標を達成するのに絶好の場だと思うのです」


 少女の方は、何事も無かったように、はきはきと話し続けている。


 俺はまだ下を向いて、静かに沈黙をしていると、そこで倖平が話しかけてくる。


「姉も美人だけど、妹も、可愛いよな」


「そう…だよなぁ」


 その、姉に方は知らないけどね。


「俺の妹とどっちが可愛いと思う?」


「いや、そもそも年が違うよね。」


「そうだな、なら俺の妹があと二年後で考えてみて、どう思う?」


「そうだなぁ~」

 なぜ俺に聞くの!


 と、言ってやりたいのだけど…比べるも何もなぁ……。


 答えようによっては、殺されそうだし……。


「で、どう思う?」


「うぅ~……あれだな、容姿でちょっぴり負けているな。たぶん」


「っ」

 と、その瞬間、倖平の指の先が俺の手の甲に触れた。


「ちょっと、待った、待った、だがな、未来の人の容姿なんて誰にもわからないと思うよ」


「でぇ何が言いたいのかな?」


 あぁやばい、ちょっと、怖いって!


「あっ、そうだな、倖平が、倖平の妹に、これからも、もっと体に良い物を食べさせてあげたらいいと思うぞ!」


 と、いって、拳をぐっと握り前に突き出して、がんばれ! という合図を送ってやる。


 適当だ。しかし望みはあるような気がする。


「……よし、がんばってみるよ。ありがと」


「あぁ、そうか、うん」


 だって、その兄の容姿が良いのだからね。

 遺伝、というものだろうか。


 絶対に倖平の妹も、今よりももっと綺麗になってゆくだろう。と、考えています。


「だけど、俺の妹の事をお前に指摘されるのは癪だ!」


 そういって、手の甲の薄い皮膚を抓られる。


「いてっ……理不尽だぁ」


 そう世の中はいつだって、いつだって理不尽に出来ている。


 そんな会話も落ち着いて、一気に周りの声が聞こえるようになる。


 その時、あの少女の声がまたはっきりと耳に入ってきた。




―登場人物― 

 犬坂 風季 (いぬさか ふき)

 也宮 倖平 (なりみや こうへい)

 千東 登 (せんとう のぼる)

―以上―


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