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少年や少女、それに、神様の描く物語  作者: コリー
自信 【《修正中》Ⅰ~Ⅱ】
13/32

自信 【Ⅰ】

  書写 ―青葉 五月― 


 午前九時二十五分頃、場所は少し変わって、第二体育館ステージの裏で少女は、焦っている。


 ………………。


「大丈夫? 五月さつき


 私の姉、青葉美並あおば みなみは、【学校の星】というべき人で、容姿端麗ようしたんれい、スポーツ万能、頭脳明晰ずのうめいせきという才色兼備な人です。


 そんな姉が入学式での新入生《私達》に在校生の代表から送る【在校生の歓迎の言葉】に在校生代表として選ばれないはずがなく、そしてその妹である私、青葉五月あおば さつきにもその火の粉が降ってこないはずがないわけで。


「だ……大丈夫よ。お姉ちゃん」


 それはまぁ私だってこの才色兼備な姉にも劣らないくらいに、自分で言うのも恥ずかしいけれど、見た目だってまぁ可愛い方だと思うし、勉強も結構出来る方だと思うし、運動は姉にも負けず劣らずといった所。

 でも……。


「そこが甘かった!」


「な、何が甘かったの? 朝、五月が食べたイチゴと林檎ジャムと角砂糖をパンの間に挟んだ、『五月オリジナルミックス』そんなに甘かったのかしら?」


 つい口に出してしまった!

 いやいやそれよりも私のオリジナルミックスの中身を堂々としゃべらないでよ。


 誰かがまねしたらどうするの!


「なっ、何でもないよ……ちょっと考え事をね」


 ええとなんだっけ、そう、そうよ、最初はただの火の粉、火の粉がいくら集まったって、火がそこに出来るわけじゃない。


 火の粉はただの火の粉、火ではないのよ。


 ただそこに少しでも燃える物があれば、火の粉は火となる。


 そして炎《姉》から零れ落ちてきた火の粉は、易燃物《私》という存在に降りかかり、そこに新しい火が生まれる。


 姉ほどではないけれども、周りよりも少しばかり目立つ私は、今の私にはもうどうにも出来ないくらいの【第二の学校の星】という希望と期待ですでに燃え上がってしまっていて……そんな私は今、新入生代表として【新入生誓いの言葉】でなにをどう語ろうか、悪戦苦闘している。


 別に、今日いきなり【新入生誓いの言葉】の台本を考え始めたわけでもなく、かといって、前々から考えているけどいまだにまとまってないと言うことでもない、ましてや、大勢の人たちの前で、入学式でいきなり発言をするのが恥ずかしくてあがってしまっているという訳でもない。


 【新入生の誓いの言葉】を皆に伝える方法はもう、十通りはざらに考えている。


 ただ……。


「続きまして、在校生代表、青葉美並さん、お願いします」


「はい」


 姉は椅子から立ち上がると、隣に座り込んでいる私につぶやいてくる。


「じゃ言ってくるね。やっぱり、新入生代表は緊張すると思うけど私も在校生代表としてがんばってくるから五月もがんばって!」


 そう言って、堂々とステージの裏から、表のステージへと歩いていく姉の姿を見ていて、とっさに立ち上がった。

 私は、表のステージ、表のステージを見ている生徒達の一部からなら見えてしまう所まで早足で歩いて行く。


「お、お、お、お……」

 恥ずかしさと、自分のプライドが邪魔をして、上手く姉に伝えたい事を切り出せない。


「ん?」


 姉の優しい視線を受けて目を泳がせてしまっている私、そして、姉に視線を戻す前に丁度この角度から見える最前列のクラスの、ある一つの席に座っている少年に視線が固まってしまう。


「お、起きなさい!」

 …………。


 ……つい、自分の座席で、それも最前列で誰がどう見ても、とても気持ちよさそうに寝ている少年に対して自然と出てしまった言葉を、どう見ても姉に言ったようにしか思えない状況で言い放ってしまった。


「え? あっがんばるね!」


 それに、どう勘違いしたのか、姉が不意打ちを食らったような顔をして、その小さい拳を握って私にしか見えないように小さくガッツポーズをした。


 正直姉のそうゆう顔を見るのは久しぶりだったから、少しうれしかったりもする。


「うん……」

 とっさに小さくそう呟くと、なぜだろうか、少し顔が緩んでしまったのを感じた。


 そして、こんな状況で緩んでしまっている自分に負い目を感じてか、それともただ恥ずかしいと思ったのか。

 スッ、と姉に背を向けると、姉が立っている表のステージから、また、裏のステージへと戻りながら思う。


 あぁどうせ、新入生でも知っている人は知っているという【学校の星】こと青葉美並が在校生の代表として【在校生の歓迎の言葉】を語るのだから、入学するまで知らなかったという人でもこの時間だけは、特に耳を澄まして聞くことだろう。


 姉がまだ新入生の時に、入学式で新入生代表の言葉を語った時は最初はしゃべる人もいたけれども途中からしゃべる声などは全く聞えてこなくなり、終盤は物音ひとつしなかったと云う。


 それは、私立霞原学校中等部第二体育館以来初の出来事だったという伝説として私も幾度も聞いたことがある。


 それはもう、耳にたこが出来るくらいに。


 きっとあの少年も、生き返るように目を覚まして聞き入るに決まっているのだから。


 そう考えている間にも、姉が語り始める。


「新入生の皆さん。このたびは入学おめでとうございます」


 姉は軽く会釈をして、優しさのこもる目で、全体を優しく包み込むような声で、語り始める。


「私たち在校生一同は、皆さんの入学を心から歓迎しています」


 姉は、そこで一息ついて、また、語り始める。


―登場人物― 

 青葉 五月 (あおば さつき)

 青葉 美並 (あおば みなみ)

―以上―


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