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プロローグ 【Ⅰ】 『道のり』
書写 ―とある少年―
少年の道のり。
その道の行く先には。
新しい生活と、新しい出会いが待っていた。
その道の道中を、空を見上げながら歩く少年。
その少年の耳に入ってくる音。
道路を走る車の音。
見知らぬ人達がしゃべる声。
川の流れる音。
土手の土の上を歩く自分の足音。
そして、少年の道行く先で感じる、感覚や漂う香り。
背中から吹き抜けてくる風の感覚。
近くにあるのであろう、パン屋からただよう、焼けるパンのいい匂い。
そして、頭の上を舞う、桜の花びらの香り。
そんな新鮮な感情を心にこめながら。
ふっと、思う。
「……平和だなぁ~……」