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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

黄昏マン

掲載日:2026/05/18

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 こーらさん、こーらさん! ビッグニュースですよ!

 なんと「黄昏マン」が現れたっていう話です。友達もずいぶん興奮していました。

 あれ、言っていませんでしたっけ? 黄昏マンというのは、陽の光が赤くなる夕方ごろにのみ現れる、未確認生物ですよ。世間でいうツチノコとかのたぐいでしょうか。

 でも、このあたりじゃツチノコよりも出会う確率が高いとされていますよ。生態こそつかめていませんが、わたしなんかにも話が伝わってくるくらいには。

 そして、某Gのごとく1匹見つけたときには裏に10人、20人いることも珍しくないんです。


 ――え~、本当にご存じないんですか?


 だったらいい機会ですし、出かけましょ、出かけましょ!

 いや~、現代の情報網はありがたいですね。共有するのに、ほぼタイムラグがありませんから。黄昏マンを見つけた直後であるなら、出くわす可能性も大きいかもですし。


 おっと、ターゲットの姿は知っておいたほうがいいですね。

 はい、これが友達の送ってくれた「黄昏マン」の画像ですよ。ちょっとぼやけていますけれど。


 ――全身タイツにマントをつけた、スーパーマンだかのフィギュアに思えるんだが?


 そう。そのようなコミックから出てきた、〇〇マンじみた格好をとることが、黄昏「マン」と呼ばれる由来なんですよ。

 これはあくまで容姿の一種にすぎません。時と場所によってさまざまな見た目で現れ、しかしそれはフィクションのヒーローたちをなぞっている。擬態能力じゃないか、と考えられています。


 ――おもちゃで撮影したいたずらじゃないのか?


 まあ、そう思われるのも無理ないかもですね。

 大きさからして、せいぜい10センチ。卓上に置かれる玩具のように思うのが自然なところかと。

 なので、ナマで動いている黄昏マンを見てもらわなくてはと思いまして。こうして連れ出させてもらったんですよ。

 この写真のポイントは、ここからちょっと歩きますが遠すぎるってほどでもありません。ちゃっちゃか参るとしましょう。


 う~ん、このあたりですかね。大橋のたもとにあたるところです。

 ときおり青いビニールシートがかけてあって、誰かが寝床にしている気配がするのですが、いまはそのような感じがしませんね。

 で、例の写真ですが、このアングルだとあそこのフェンスの根元くらいでしょうか。あの草がいくらか生えているところです。あんなわずかな土からも顔を出すなんて、いやはやたいしたたくましさですねえ。見習いたいところです。

 えっと、ここから回り込んで……うん、撮影したのはこのアングルで間違いなさそうです。

 撮影したのはざっと今から30分前。この黄昏マンはすでに移動してしまっているでしょう。


 ――なら、ここにいないで足取りを追いかけたほうがいいんじゃないのか?


 ちっちっち~、ですよ。

 足を使うのが捜査の基本とはいえ、やみくもに歩き回るのは博打にほかなりません。ここは落ち着いて探るのが、吉です。

 ここは髪の毛を……ふん、と!

 よ~し、これだけ抜ければ十分……て、こーらさんどうしました?


 ――お前、髪の毛大事にしてたんじゃないのか? 1本でもうるさいのに、インスタント10円はげをこさえるほど抜くとか言語道断だろ?


 いえいえ、千載一遇の好機に比べたら些末なことと思いますが? いずれまた生えてくるものより、もう二度と出会えないかもしれないもののために力を尽くすべき。

 こーらさんはそういうことに理解を示す人だと、うかがっていたのですけどね? まあ、ちょっとやらせてもらいますよ。

 え~と、このあたりにいたってことは、こうして髪を垂らして……ほら、見てください。

 黒い髪の先っぽが真っ白になっちゃったでしょう? おおよそ10センチくらいですから、間違いなく「黄昏マン」の痕跡ですよ。

 あとはこうして振ってやれば……ほら、先っぽがあっちを向きましたよ! これを追っていけば黄昏マンに会うことができ……と、どうしましたか?


 ――黄昏マンとやらは、本当にそのチビの姿でしかなれないのか?


 おやおや、どうしたんですかこーらさん。急に?


 ――生態もつかめていないはずの未確認生物の特性らしきものを、やたらと知りすぎる? なぜそれをべらべらしゃべって、俺を連れて行こうとする?


 ……ふ~ん、やっぱり慣れないことはするべきじゃないですね。いえ、やらなくては慣れないことばかりですか。


 そう、私こそが黄昏マンなのですよ。例の写真も、この子に撮られたものでしてね。

 化けて口封じしようと思ったら、この子の思考がどうも「こーらさん」なる人にネタを提供したい気持ちでいっぱいだったらしくて。たわむれに、どんなものか見てみようと思ったわけです。

 記憶を読み取る限り、この手のことにほいほいついてきそうな方で、あわよくばサンプルにしようと思ったのですが……あてが外れましたね。

 こうも警戒されると、あなたも意地でも逆らおうとするでしょう。なにより、こわばった精神には私は干渉ができない。あの子のようにはいかないでしょうね。


 ここはどうです? あの子をお返しし、この出会いをネタとして提供を許す代わり、私の後をこれ以上追わない、というのは?

 これも先に話しましたが、私の仲間は10、20とたくさんいますから。いかに「こーらさん」が手練れであっても、囲んでフクロにするくらい、わけないですよ?


 ……交渉成立、とみていいですかね?

 ああ、この子なら、ここの中洲の草原の中に横たわっていますよ。さほど時間が経っていないとはいえ、早く行ったほうがいいかと。私は何もしなくても、他が何をするか分からない世の中、でしょう?

 私たちはまた、ひっそりとどこかで慣れていきますよ。本物らしく人間に化けるときにそなえて。

 いずれ人類が黄昏を迎えるそのときに、またお会いしましょうか。

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