散歩キャンセル
北海道の冬の室内は暖かい。
だいたいどこの家も23〜25℃くらいの室温だと思う。
エネルギーの無駄使いと言うなかれ。
家を温めなければ、壁の中の水道管が凍る。極寒の屋外から戻って来たまま、低体温症になる。
それに北海道の住宅は断熱性が高いので、暖房をつけたら、どんどん温まっていく。
暖房はつけたり消したりするより、建物を冷やさないように弱い熱で温め続ける方が、結局は燃料の節約になるというのもある。
冬の北海道旅行に来た人は、その寒暖差に困ると聞く。
そりゃそうだ。
寒さに備えて厚着をしてきたら、店の中は常夏の島。汗をかきつつ外に出れば冷凍庫。
逆にこちらから関東に行くと、家の寒さに泣く。
そんなわけで、純然たる道産子の私は、家ではペラッペラのジョガーパンツを履いている。
回覧板? いちいち着替えるわけがない。
長いコートを羽織って、裸足で靴を履く。
なんなら、犬の散歩もそのスタイルで行く。そのスタイルで行って、たまに後悔をする。
マイナス4℃――雪も止んだし、行けるだろう。
数日前のことだ。
散歩をねだる犬を連れて外に出た。
面倒だったので、冬をなめたいつものスタイルで。
通常のマイナス4℃なら行けた。
だがその日は強風で、体感温度はさらに低かった。腿が痛い。戻って着替えるべきか、散歩をサッサと済ませるべきか。
私は後者を選んだ。
「ほら、早く行くよ」
わんこに声をかけたが、彼女は玄関前から道路に降りてこない。
どうした。雪は大好きだろう?
「抱っこする?」
ウウウ……ウワンッ!
――怒られた。
でも寒いんだよ。早く行こうぜ。自業自得かもしれないけど、脚が痛いんだよ。冷たすぎてビリビリするんだよ。
鼻を鳴らしながら道路を覗き込んでいたわんこは、ふと顔を上げて――家に戻って行った。
えっ? 帰るの? 散歩取りやめ?
どんなに雪中散歩が好きだって、犬も寒いし、冷たすぎて足がビリビリすることもあるのだろう。
何事にも限度というものがあると、思い知った。




