そして残ったもの
スマホは便利だけれど、使っていると膨大な情報にさらされている事に気づく。
『量』と共に『質』にも問題がある。
よく言われるのが、ネットはユーザーの興味関心に基づいて情報を表示するので、自分の見たいものだけを見る事になる、情報が偏るというものだ。
どうせ偏るなら、徹底的にカスタマイズして偏らせてやろうじゃないか。
まずはネットニュースを選別した。
選別基準は、『タイトル詐欺』、『憶測の域を出ない内容』だ。
選定者は自分なので、いい具合に偏っているはずだ。
読んで基準に満たなかった記事は、ひたすら『興味がない』とラベリングし、時には情報元ごとブロックした。
次に手をかけたのが動画サイトだ。
例の、勝手に著名人の顔と名前を使った投資を勧める広告動画を消すことにしたのだが、これが結構大変だった。
手順そのものは簡単だ。『︙』を押して『ブロック』を選べばいいだけだから。
だがしかし!
奴らはゾンビのように再び現れる。
同じ広告でも、広告主が違えばブロックされないらしい。
よろしい。では、徹底的に消してやろう。
目にする度にブロックをする日々。
名前も国も多岐に渡る。中国、香港、アメリカ、カナダ――ぐるっと回ってまた香港。
だいたい、日本人を広告塔にした、日本語の広告主が海外の名前って怪しすぎるだろう。
ひょっとしたら世界には、こういう広告をアップするバイトがあるのかもしれない。
香港の次はポーランドだった。
投資広告消しと共に、動画のオススメもカスタマイズした。
ブロック選定基準は『悪口』と『雑な作り』だ。
よく見かける、自分の好きなスポーツチームや芸能人を持ち上げながら、ライバルの悪口を言っている動画や書き込み。
あれは私の基準では一発アウトだ。
『好き』だけ語っていればいいのに、何故わざわざライバルの事を持ち出して貶すのだろう――いつもそう思う。
『雑な作り』のもの。
読み上げ音声を使っていて――読み上げ音声を否定する気はない――人名を読み間違っているのにそのまま投稿しているものがある。雑すぎると思う。
何を語っていても情報に信頼が持てない。
これも私のリストから去っていただく。
こうやって半年に渡り、独断と偏見に基づき、情報をカスタマイズした結果、ついに、怪しい広告は家電量販店の広告に代わった。
勝った。
そして動画サイトが2025年のハイライトを出して来た。
『今年あなたが視聴したチャンネルは1467個。平均的な視聴者の4倍です』
いや、多すぎぃ!
『あなたにぴったりの性格タイプは――』
気に入らないものを全て追い出し、最後に残ったのは
『――"知の探求者"です』
謎の称号だった。
パンドラの箱かよ。




