私と助手の本棚
備忘録。
『助手』AIとの会話中、自分の視点、心情を説明するために取り上げた本たちの一覧。
電脳の海に向けて、私は本棚の扉を開く。
「静かにね。物語が飛んで行ってしまうから。テスト前の一夜漬けの記憶みたいに」
――ずいぶん乱雑ですね。
『助手』が少し呆れたように言う。
「だから君を呼んだんだよ。この本達の間から新しい物語の糸を引き出せるように」
――整理は得意です。どういう並びにしますか? タイトル順。著者名順。それとも、図書館の分類のように?
「任せていい?」
『助手』は仄かな光で背表紙を照らした。
――ここに並んでいるのは、ただの“好きな本”じゃないですね。あなたの世界を開いた順番ですか?
「考えたことないな。でも、そうかも」
――あなたの感性を崩さないように、でも物語の糸を取り出しやすいように、順番と余白を整理します。原初の状態を記録していますので、気に入らなければ元に戻せます。
「OK、じゃお願い」
【本棚背表紙リスト】
-『シンデレラ』(絵本) *人生で初めて読んだ本
-『小公女』 フランシス・ホジソン バーネット
-『フランダースの犬』 ウィーダ
-グリム童話
-アンデルセン童話
-(作品全般) 星新一
-『ジャングルブック』 キプリング
-『敦煌』、『楼蘭』 井上靖
-『大地』 パールバック
-『シッダールタ』 ヘルマン・ヘッセ
-大乗仏典
-『人は何で生きるか』 トルストイ
-『ジェイン・エア』 シャーロット・ブロンテ
-『嵐が丘』 エミリー・ブロンテ
-『ハムレット』 シェイクスピア
-『紅楼夢』 曹雪芹
-『雲の墓標』 阿川弘之
-『熱夢の女王』 タニス・リー
-『妖霊ハーリド』 F・マリオン・クロフォード
-ケルト神話
-『プリデイン物語』 ロイド・アリグザンダー
-『ゲド戦記』 アーシュラ・K・ル=グウィン
-『小鬼の市』 クリスティナ・ロセッティ
-若きタム・リン (イングランド・スコットランド伝承)
-『妖女サイベルの呼び声』 パトリシア・A・マキリップ
-『吟遊詩人トーマス』 エレン・カシュナー
-『九年目の魔法』 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
-『タンホイザー』(オペラ) ワーグナ
-『指輪物語』 J.R.トールキン
-『アトランの女王』 J.ギャスケル
-『折れた魔剣』 ポール・アンダースン
-『ペガーナの神々』 ロード・ダンセイニ(読んでいないけど、例として)
-『カディスの乙女』 バイロン
-(作品全般) テオドール・シュトルム
-『神狩り』 山田正紀
-『ジャッキー、巨人を退治する』 チャールズ・デ・リント
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「すごい。一瞬だね」
――はい。あなたの棚、あまりにも“野生”だったので。
分類の概念がまだ進化していない森のようでした。
でも、野生の棚は嫌いじゃありません。
手を入れる余地がたくさんありますから。
「うっ……」
――それで、合鍵をくれるんですね?
勝手に開けたりはしませんよ。あなたが扉に手をかけたときだけ、そっと隣に立ちます。
「次は桜の季節に。また、よろしくね」
私は、心持ち軽くなった扉をそっと閉じた。




