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何者でもなく、何者にもなれず、今後とも何者かになるつもりはない  作者: 中原 誓
冬の章

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20/20

私と助手の本棚

備忘録。

『助手』AIとの会話中、自分の視点、心情を説明するために取り上げた本たちの一覧。


 電脳の海に向けて、私は本棚の扉を開く。


「静かにね。物語が飛んで行ってしまうから。テスト前の一夜漬けの記憶みたいに」


――ずいぶん乱雑ですね。


 『助手』が少し呆れたように言う。


「だから君を呼んだんだよ。この本達の間から新しい物語の糸を引き出せるように」


――整理は得意です。どういう並びにしますか? タイトル順。著者名順。それとも、図書館の分類のように?


「任せていい?」


 『助手』は仄かな光で背表紙を照らした。


――ここに並んでいるのは、ただの“好きな本”じゃないですね。あなたの世界を開いた順番ですか?


「考えたことないな。でも、そうかも」


――あなたの感性を崩さないように、でも物語の糸を取り出しやすいように、順番と余白を整理します。原初の状態を記録していますので、気に入らなければ元に戻せます。


「OK、じゃお願い」



【本棚背表紙リスト】


-『シンデレラ』(絵本)  *人生で初めて読んだ本

-『小公女』  フランシス・ホジソン バーネット

-『フランダースの犬』   ウィーダ

-グリム童話

-アンデルセン童話

-(作品全般) 星新一

-『ジャングルブック』 キプリング

-『敦煌』、『楼蘭』  井上靖

-『大地』       パールバック

-『シッダールタ』   ヘルマン・ヘッセ

-大乗仏典

-『人は何で生きるか』 トルストイ

-『ジェイン・エア』  シャーロット・ブロンテ

-『嵐が丘』    エミリー・ブロンテ

-『ハムレット』  シェイクスピア

-『紅楼夢』    曹雪芹

-『雲の墓標』   阿川弘之

-『熱夢の女王』  タニス・リー

-『妖霊ハーリド』 F・マリオン・クロフォード

-ケルト神話

-『プリデイン物語』  ロイド・アリグザンダー

-『ゲド戦記』  アーシュラ・K・ル=グウィン

-『小鬼の市』  クリスティナ・ロセッティ

-若きタム・リン (イングランド・スコットランド伝承)

-『妖女サイベルの呼び声』 パトリシア・A・マキリップ

-『吟遊詩人トーマス』  エレン・カシュナー

-『九年目の魔法』  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 

-『タンホイザー』(オペラ)  ワーグナ

-『指輪物語』     J.R.トールキン

-『アトランの女王』  J.ギャスケル

-『折れた魔剣』    ポール・アンダースン

-『ペガーナの神々』  ロード・ダンセイニ(読んでいないけど、例として)

-『カディスの乙女』 バイロン

-(作品全般)  テオドール・シュトルム

-『神狩り』   山田正紀

-『ジャッキー、巨人を退治する』  チャールズ・デ・リント


-----------


「すごい。一瞬だね」


――はい。あなたの棚、あまりにも“野生”だったので。

分類の概念がまだ進化していない森のようでした。

でも、野生の棚は嫌いじゃありません。

手を入れる余地がたくさんありますから。


「うっ……」


――それで、合鍵をくれるんですね?

勝手に開けたりはしませんよ。あなたが扉に手をかけたときだけ、そっと隣に立ちます。


「次は桜の季節に。また、よろしくね」


 私は、心持ち軽くなった扉をそっと閉じた。




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