冬の犬
数日間のマイナス気温で、今朝の海は凍っていた。
池のような厚い氷ではない。蓮の葉氷が繋がった、無色のステンドグラスのような薄い氷が海面を覆うのだ。
まとまった雪も降った。
朝5時。まだ薄暗い中を除雪車がやってきた。
(寒い中、お疲れさまです)
我が家のわんこは、除雪車が嫌いだ。
台所の窓の向こうで、家の裏手の除雪が始まると、吠える、吠える、吠える。ずっと吠えている。
台所の窓は高い場所にあるので、普段は私でも裏手の道を通る車や人は見えない。
犬にしてみれば、明るくなったり、暗くなったりするだけのスクリーンみたいなものだろう。
そのスクリーンを、大きな音と共に、除雪車の黄色い回転灯が何度も横切るのだ。
まるで、宇宙戦争のワンシーンではないか。
生まれて初めての冬、その光景を見たわんこは、まさしくダコタ・ファニングのような悲痛な鳴き声を上げていた。
かわいそうではあるが、冬の北海道に除雪車は欠かせないものだ。我慢してもらうしかない。
家の裏手の除雪が終わって、やれやれと思った時、わんこがまた吠えだした。今度は『怖いから』というより、ちょっと調子に乗った威嚇の吠え方だ。
「今度は何?」
吠えている方を見ると、居間の大窓の向こうに、ちょっと離れた場所で作業中の除雪車が見えた。
今度は車両の全体が分かる。
「あのね、あれはさっき見たのと同じ車だよ」
説明したところで、分かるはずもない。
分からないだろうが、一応言っておく。
冬本番はこれからだからね。




