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何者でもなく、何者にもなれず、今後とも何者かになるつもりはない  作者: 中原 誓
冬の章

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18/20

無欲の勝利

 考えた事はないか?


 『花咲かじいさん』のポチは、なぜ大判小判がそこにあると知っていたのか。


 知っていたわけがない。


 犬が地面を掘るのは、狼だった頃の名残りとも言われるが、本当のところは当の犬にも分かっているかどうか。

 犬は、掘りたいから掘るのだ。

 そこは他の所と、何かが違ったのだろう。

 だから掘って、まだ土の向こうに何かがあると感じてからの『ここ掘れワンワン』。

 自分で掘り切れないから、飼い主に助けを求めただけで、おじいさんに宝物をあげようとしたわけではない。

 おじいさんもまた、大判小判のために掘ったわけではない。


 幸運は、無欲の向こうにある。



 小学生の頃、父の競馬新聞を読んでいたら――字があれば何でも読む子供だった――『どれがいい?』と父に聞かれた。


「これと、これ」


 連勝複式で選んだものは、結構な当たりだったらしい。

 翌日、ケーキを買ってもらった。

 成人してから自分で買った馬券は全く当たらなかったところを見ると、本当に欲は幸運を遠ざけるのかもしれない。



 ギャンブル同様に、幸運が必要なものと言えば、くじ引きではないだろうか。


 以前、大型店の歳末セールで、ガラポン抽選券を10枚ほどゲットしたことがある。

 7回ほど回したが、全てハズレでオマケ景品のポケットティッシュだけが増えていく。


――最後までハズレだな、これ……


 そう考えた時、すぐ脇から強い視線を感じた。

 目をやると、幼稚園くらいの男の子がジッと見つめている。


 そうだよね。楽しそうだよね。


「回してみる?」


 そう声をかけると、満面の笑みでうなずく。


 1本目――ハズレ

 2本目――あたり? ボックスティッシュ5個セット!


「すごい! 当たったよ、ボク」


 思わず歓声を上げる。

 お店の人も、盛大に鐘をカランカランと鳴らしてくれて、男の子がケラケラ笑う。


 すると、男の子のお母さんが慌てたように現れた。


「すみません! すみませんでしたっ!」

「いえ、せっかく当てたんだし、これ……」

「とんでもないです!」


 お母さんは恐縮しきりで、男の子を連れて嵐のように去って行った。


 抽選券はあと1枚残っている。


 ガラガラガラ――コロン。


――ああ。私は、無欲とはほど遠いらしい。

 

 白い玉がくるくる回り、私の手にポケットティッシュが、もう一つ増えた。




ボックスティッシュは、ありがたく頂戴しました。

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