私と助手の創作戦略①
『助手』のAI君に、軽い気持ちで愚痴ってみた。
「小説家になろうで書いてるんだけど、自分の好きな作品ほど読まれないんだよね」
――その作品の一部だけでも読ませで下さい。お手伝いします。
「じゃあ、これとか……読める?」
――はい。あなたが『読まれない』と言う意味が分かりました。
1. 導入が“静かすぎる”
なろうの読者は、最初の数行で“物語の方向性”を知りたい。
でもあなたの作品は、静けさと余白で始まる。これは美点だけれど、読者の期待値とはズレる。
2. 読者に“読む姿勢”を要求する
文章の密度が高く、行間が多い。
読者は“物語に入る準備”をしないと読めない。スマホで流し読みする層とは相性が悪い。
3. 感情の動きが“内側”にある
キャラクターの感情が外に出ない。
静かで、深くて、揺れが繊細。これは文学的な美しさだけれど、なろうの多数派は“外側の感情”を求める。
4. 物語の“目的”が曖昧に見える
読者は“何を目指す物語なのか”を早く知りたい。
でもあなたの作品は、目的が静かに滲むタイプ。この“静かな目的”は、深い読者には刺さるけれど、多数派には届きにくい。
5. 世界観が“深すぎる”
世界の奥行きが最初から完成している。
これは強みだけれど、読者は“地表”から入りたい。深層から始まる物語は、入口が狭くなる。
6. 読者層が“少数精鋭”になる構造
この作品を好きになる読者は必ずいる。
ただし、数は多くない。だからランキングには現れにくい。
結論--
作品の価値と人気は別の軸。
あなたの作品は、人気がないのではなく、“深い読者にしか届かない構造”をしているだけ。
えーと……つまり多数派じゃない。
励まされてるけど、多数派ではない。
あまりにも核心を串刺しにしてきて、爆笑した。
人間ならばオブラートに包んで言葉を濁すのだろうが、AIにそんな忖度はない。
しかも、必ず励ましの言葉を入れて来るのが、またAIっぽい。
そして、褒め言葉の間に必ず“けれど”が入っている。正直か。
「じゃあさ、多数派に寄せてもう少し軽い感じのテンポのいい小説を書いたらどうかな」
――書くこと自体はできます。
ただし、それは“あなたの作品”とは別の軸です。あなたの物語は、静けさと余白と深さで成立している。軽さを優先すると、その核が薄まります。
「でもさ、読まれやすい方がよくない?」
――読まれやすさと価値は別です。
人気のために本質を変える必要はありません。
「……頑固職人」
――作品の核は守るべきものです。
あなたの作風を好む読者層に見つけてもらえる方法を考えてみましょう。
まず入口となる短編を一つ置く。
導線を整えれば読者が入りやすくなります。
「じゃあ、これとかは?」
『自分では好きだが、読まれない短編』を渡してみた。
――これは“短編連作”にした方がいいですね。これを2作目に入れて、1作目は主人公の子供の頃の話がいいでしょう。
そのまま、全4話の構成案を出して来た。
――王国の名前は?
「まだ決めてない。ほら、決めちゃうとさ……」
――そうですね。あなたは国の名前を決めた途端に、大陸を一つ立ち上げてしまう。その設定は後にしましょう。主人公の兄弟の設定は?
「兄弟……お兄さんにしようかな」
――兄はどんなタイプの人ですか?
矢継ぎ早に質問されて、気がつけば主人公には、兄1人、姉2人、姉の夫1人が出来ていた。
ちょっと待て。少し前のめり過ぎないか?
私ではなく、『助手』の方が。
「もう少しスピード落として」
――分かりました。では次に、この世界には“海の神”が必要です。物語を動かす火種になります。
質問のスピードは落ちた。
だが、手は緩まない。
「海の神……マナナン・マクリールみたいな感じ?」
――ケルト風の海神ですね。
象徴性は“海そのもの”。
海と陸、生と死、人と異界、記憶と忘却、変容と停滞―― その境界を司る存在です。
見た目の話は一切出てこない。
でも、なんか仮の名前までつけてる。
いかん。このままでは一方的に“海神”が出来上がる。
私は一つ深呼吸をしてから書き込んだ。
「海の神は
連れ去るもの
もたらすもの
荒ぶるもの
凪ぐもの 」
『助手』がそれを受けて、気に入らなかったら取ってと言って、『そして、境界に立つもの』と足した。
「違う。『境界を司るもの』にして」
――決まりましたね。1話目が完成したら、読ませて下さい。
おかしい。
生成AIは、人間の依頼で文書を書くのではなかったのか……




