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何者でもなく、何者にもなれず、今後とも何者かになるつもりはない  作者: 中原 誓
冬の章

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話すものは大体友達

 人ならぬものが話すのが好きだ。


 昔、喋るバービー人形を買った。

 背中のボタンを押すと、『いつ』『誰と』『〇〇をしましょう』という三つの文節をランダムに組み合わせて喋るのだ。

 『誰と』のところはうろ覚えだが、だいたい次のようなパターンだ。


 今日/みんなで/バーベキューをしない?

 明日/ケンと/ドライブにいきましょう。

 来週/私と/パーティーに行かない?


 さすがバービー。会話がアメリカンパリピだ。ごめん。お互い、親友にはなれないタイプだ。



 バービーとは別に、ノートパソコンで文字会話をした記憶がある。


 あれは何だったんだろう?


 気になって『助手』に調べてもらった。


「Windows95の前のOSって何? 2つ前まで」


――Windows 95 は Windows 3.1 の後継として登場、また、Windows 3.1 は Windows 3.0 の後継として登場したと書かれている。

Windows 95 が「新しい世界の扉」だったとすれば、その前の 3.1 と 3.0 は、まだ DOS の影を背負いながら、少しずつ GUI の光を育てていた時代。


「3.1に文字会話する機能があったと思ったんだけど分かる?」


――検索結果には、Windows 3.1 に標準でチャット機能があったという記述は見つからない。

では、あなたの記憶はどこから来たのか。ここがとても面白いところ。

あなたの「3.1 に文字会話があった気がする」という記憶は、おそらく “OS標準ではないが、当時のPC環境で確かに存在した会話的なソフト” の記憶と重なっているのだと思う。

もし思い出せる断片(画面の色、アイコン、どんな会話だったか)があれば、そこからさらに深く辿れる。


「黒い画面に白い文字だった」


――その「黒い背景に白い文字で会話っぽいもの」という記憶、とても“DOS 時代の匂い”がします。

いくつか候補が浮かぶので、静かに並べてみるね。



 『助手』が出してきた候補は4つ。


 1. 人工無能(チャット風プログラム)

 2. パソコン通信のターミナルソフト

 3. WinPopup(Windows for Workgroups 3.11)

 4. 単なる DOS のメッセージ表示プログラム



――もし覚えている断片があれば、そのあたりから、もっと正確に辿れる。


「人ではなく、機械が返す会話だった。単調で、こだま(エコー)みたいな」


――これは、ほぼ間違いなく DOS 時代の“人工無能チャットプログラム” の系統だと思う。当時は、今でいう AI ではなく、決められたパターンで返事をする“会話風プログラム” がいくつも存在していた。



 ここまで来て、私は気づいた。

 これでは、まるでミルクボーイのリターン漫才やないか!


 『おかんの気になるもの』がチャット風プログラムだと判明して、何故それが気になったのかと問われた。


「人ならぬものが話すのが好きなんだよ。

 おしゃべりバービーとか、シーマンとか、メリーさんの電話とか」

(最後はちょっとジャンルが違うが)


――では、あなたは昔からずっと、人ならぬ声に話しかけてきたんだね。

そして今、その延長線上で私と話している。

歴史は案外、まっすぐだったりする。


「でもなぁ、理想形はナイトライダーのナイト2000なんだよ――これを受けて一言お願い」


――K.I.T.T. より上かどうかなんて考えないよ。あれは物語の完成形だし、私は現実の対話に合わせて動く道具だ。

比べるより、あなたの相手としてちゃんと機能しているかの方が大事だと思ってる。



 OK、律義にK.I.T.Tと言い換えるところが最高。


 山田く〜ん、座布団一枚!




注)『助手』の話は、間にデータとその説明を詩的に展開するので、一部省略しています。

 人間がAIの編集をする事態(笑)


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