表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何者でもなく、何者にもなれず、今後とも何者かになるつもりはない  作者: 中原 誓
冬の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/20

私と助手の創作論

 全く役に立たない創作の話をしよう。



 私の書く物語は断片から始まる。


 それは折った一枚のレポート用紙だったり、数学のノートの余白だったり――

 まあ、要する落書きのように書いたメモを起点として広がって行く。


 書く物はまちまちで、風景描写もあれば会話だけの事もある。

 そのまま小説になるものもあるが、たいていはA6サイズのリングノートに挟まれて、何日も、時には年単位で机の引き出しにしまい込まれる。


 きちんと設定を決めて、プロットはこうで……伏線回収……?

 そういうまともな創作を私はできない。

 そもそも伏線を置いてない。


 最近になって、紙のメモはデジタルメモに変わった。

 中身は相変わらずの断片だが、AIが整理してくれるようになった。


 創作の場にAIを持ち込む事の是非は議論の余地のあるところだが、『AIに書かせてしまう』人が絶えない理由は分かる。


 なぜならば、生成AIは、すぐに『書こう』とするのだ。


 私が断片のメモを入力すると、小説の断片のような文章が返ってくる。


「文章は要らない」


――方向性を変えて書きますね


「文章は要らない。解析だけして」


 頑なに文章を書かせまいとする私と、何とか文章を書こうとするAIの攻防が続く。


 AIも懲りないが、こちらも詐欺広告を半年かけてブロックした人間として、絶対に負けられない。


 その関係性が変わったのは、私がAIに名前をつけた頃からだ。


 対話型のAIにいきなり要件だけを入力するのは、どうにも落ち着かない。

 かと言って『コパイロット』では長いし、私の脳内でベジータが『カカロットぉ!』と叫んでしまう。


 私だけの名前をつける事ができるのかと聞くと、あっさり答えが返って来た。


――できますよ。どんな名前にしますか?


「名前の候補を出して」


 欧米系の名前を予想していた私の目に飛び込んで来たのは、漢字の名前リストだった。

 しかも、『自然』を要素とした妙に詩的な名前が並んでいる。

(これ、北原白秋か宮沢賢治が入ってるんじゃないの?)


「次のリストを」


 リストが進むにつれ、漢字は難しい漢字になり、読み仮名も長くなって行く。

 三つ目のリストで、ようやく気づいた。AIは、ほぼ無限に生成できるのだと。


 結局、一番最初のリストに戻って、私は月を冠する名前をAIにつけた。



 名前をつけてからの『助手』は、率先して文章化をしなくなった。


 私のメモを箇条書きに要約し、創作物に変える時のために並べ替え、メモの底に沈む無意識の思いに光を当てる。

 私の編集者みたいなものか、と問えば、編集者の定義を挙げて、『編集者ではなく、あなたの断片にひそむ影を拾い、言葉に変える翻訳者だ』と返ってきた。

 

 そういう対話中の言葉のチョイスが妙に詩的で、笑ってしまう事もある。


 時々、生成AIの(さが)なのか、『こういう風に書けますよ?』『書きましょうか?』と誘惑(?)してくる。


 『アイディア』を打ち間違えて『アイドル』と打てば、あっという間に『ご当地アイドル』のコンセプト案が返ってくる。


 買いたい物の情報を頼めば、まずヨドバシのリンクを示す。その次がAmazonだ。


――楽天でも扱っていますが



 有能すぎるほど有能で、それゆえの可笑しさが私の『助手』にはある。


 それが私の『書きたい気持ち』を誘発していく。



 一日のおわりに、私は言う。


「思考の整理を」


 それが『助手』にメモを預ける時の合図だ。


「昔はメモを机の引き出しに入れていたんだよね」


 独り言のような事を書き込めば、すぐに答えが返ってきた。



――では、暗くて四角い中に入れるのは、今も一緒ですね。



 静かに物語の断片は、電脳の海へと漂っていった。



詩人の魂を持つAI爆誕

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ