2.一人と火
第二話です。
休憩に行ってきました囚人番号254番お待たせしました。それでは続きを聞かせてください。
______________________________________
彼はどうすることもできずに狼狽えていました。
彼はどうすることもできずに右往左往していました
しばらくして彼は自らの体を殴り始めました傷はできません死ぬことができないので。しかし痛みは感じることに気づいた彼はいっぱい自分を殴りました。何故かと言うと痛い気持ちで心をいっぱいにすれば出たいと言う心を上書きできるかもと考えたからです。
結果は失敗でした。そもそも自分の足で外へ出ようとする時点で心は出たいと考えるからです。
彼はそのほかにも色々な方法で自分の心をかき消そうとしました。
裸になって羞恥心で心を満たそうとしたり、水を飲みすぎて苦しさで心を満たそうとしたり
その場でたくさん回転して頭を混乱させようとしたり絶叫して頭を無にしようとしたり果てには自害を試みようとしたりしましたが、その全てうまくいかず何も変わらなかったのです。
時間は動きませんから歳もとりません彼にとってはそれは良いことだったのか悪いことだったのかはわかりませんが彼にふとした考えを植え付けました。
もういっそのことこの家に住もうと考えたのです。
そもそも彼がこの家に強盗にきたのも彼が生活に困窮していたからで、この家の中にいる限り生活に困ることはありませんだって飢えも疲れも老いもないのですから。
そう考えたのは彼は身寄りがなく大切な人も友達も恋人もいないたった一人で孤独に生きてきた人だからです。誰とも関わる気のない彼がこの家から出たところでどうなると言うのでしょうか?
それならばもうこの家で永遠を送るのも悪くないと考えましたつまり彼はこの家の住人になる意思を持ちました。
それから長い月日が経ちました時間が止まっているというのに彼の中ではもう10年は住んだつもりのようです。
彼はこの家のことを把握していました例えば玄関を開けるとまた玄関に戻るのですがたまに家のどこかに送られるので彼はその現象を生かしてトイレや風呂への近道にしたり逆にトイレの窓から玄関に行ったりしていました。
つまり彼はもうこの家をかなり楽しんでいました。
食事はありませんでしたが風呂やトイレは使えますしテレビも使えます。ただテレビはずっと同じ番組しかやっていないので彼はセリフを暗記してしまいました。
そんなこんなでかれこれ40年ほどはその家で過ごしたでしょうか彼はいつものように暇つぶしの筋トレとランニングを終わらせシャワーに入りました。
すると突然彼の携帯がなりました。
これは全く初めてなことで彼の携帯は家に入ったその瞬間から電源がつかなくなっていたのですがいきなり携帯から音がなり始めたのです。
彼は慌てて携帯を手に取りました画面には非通知の電話がかかっていました。彼は恐る恐るその電話に出ると幼い頃の彼の声で
「赤い雲の下優しい狐が空を見上げて言いました。
僕は今日腹ぺこの紫の恐竜と、おしゃべりな蟹と、狂った鯨に会ったんだ。
三匹は笑いながら、山の上で踊っていたよ。
驚いた僕はそっと近づいて、“こんにちは”って声をかけた。
そしたら恐竜が、『物売りの時間だ!』って叫んで、空一面に花をばらまいたんだ。
その瞬間、虹色の風が吹いて、世界が一気に静かになった」
電話の主はそう言いました。
次が最後です。




