表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の直球  作者: kachan
12/17

#12 西麻布の夜空


「おい、スグル?やっぱり知らなかったんだな」


「だって、中学出てから会ってねぇし、年賀状やり取りしてたくらいだよ。それも、プロやめてからは、止めたけどな」


「俺さ、ぶっちゃけ、スグルは、ミカのこと、好きだったんじゃないかって思ってたんだけど…、違ったのか」


俺は、山倉の言葉に少したじろいだ。


「バカなこと言うなよ。そう言う感情じゃねぇよ。でも、なんだってミカは失明なんかしちまったんだよ?」


「詳しくは、聞けなかったんだけど、どうも糖尿病だったらしい」


「えっ?糖尿って…、生活習慣病だろ?中年のオヤジがなる病気だろ?」


「俺も驚いて聞いたんだけと、どうも糖尿病には先天的…つまり生まれつき、ってのもあるらしいんだ」


「そうなんか…」


「スグル、どうかな。お前からミカに連絡とってもいいんじゃねぇかと思うんだ。OB会には来られないって言うしさ。な、そうしろよ」


「なんでだよ。声は元気そうだったんだろ?俺なんか連絡したって何になるんだよ」


「う~ん、あれはカラ元気だったんだと思うんだ。だからさ、お前から元気づける意味でもさ…」


「やめてくれよ。暴力事件起こして、野球界から追放されてるヤツが、どうやって失明した人間を励ますって言うんだよ。もう、電話切っていいか」


山倉は、ミカへの連絡を渋る俺に、ミカの連絡先をメールで送ってよこした。


ミカは…失明したのか。


西麻布の星が見えない夜空を見上げ、俺の心臓の鼓動が速くなるのを感じた。


星も見えない、明日も見えない。


俺も失明してるようなもんだよな。


その晩、俺は、家に戻ってから、おでんやで起こした暴力事件の後に止めていた酒を浴びるように飲み、そのまま眠りについたのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ