表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の直球  作者: kachan
1/17

#1 プロローグ

暑い。


真上から照りつける太陽の陽射しは、俺の首筋を熱し、脳天に流れ込む血液は、まるで沸騰しているのではないかとさえ思えた。


8回を既に投げ終え、体力を消耗しきっていた俺の肩は限界に達していたと思う。


いや、肩だけではない。


暑さで、意識は途切れそうになっていた。



「スグル!ここだよ、ここ!」



ミットに拳を何度も打ち付け、キャッチャーがど真ん中に構える。



「弱気になるなよ! スグル、さぁ、来い!」



俺は、ユニフォームの袖口で額の汗を拭い、大きく深呼吸をした。




中学野球の神奈川県夏期大会決勝戦は、午前中に行われた準決勝に続いての、ダブルヘッダーだった。


ピッチャーが実質一人しかいない俺達のチームが不利なのは誰の目にも明らかだったが、チームには、勢いがあった。


優勝して、全国大会に行く。


俺達のチームは、燃えていた。


決勝戦は、規定の7回を過ぎ、1‐1の同点で延長戦に入った。


9回の表、自分のチームは、相手のエラーからようやく勝ち越しの1点をもぎ取り、その裏の守備についていた。


9回の裏。


俺はツーアウトまでこぎ着けたあと、ショートのエラーでランナーを出し、ヒットとフォアボールで満塁のピンチを招いていた。


カウントは、3ボール2ストライク。


次の1球で全てが決する。



「スグル、ここだよ!ここ!」


もう一度、キャッチャーのミカが叫んだ。



俺は、薄れゆく意識の中、ミカが構えるミットだけを見ていた。



ミカ。



ミカ。



ミカ。



俺は、自分に残っている最後の力を振り絞り、ミカが構えるミットに向かって、最後の直球を投げ込んだんだ。



その後の記憶は、ない。



俺の直球は、ミカが構えたミットにしっかり届いたのだろうか。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ