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知らない。
多分もう、狂っていた。
私は狂っていたんだ。
父は、親切な人だ。
死にかけの見ず知らずの赤子を拾って、
十七歳まで、育ててくれた。
父は、死ぬべきだった。
その赤子を育て、
生理の血を飲みたいと言った。
発達した性器を、壊したいと言った。
父を殺した時、確かに感じた高揚感。
あれは、私が一番私を捨てた証拠。
血なんてみたくない、臓器も、
剥げた皮も、何もかも、見たくなかった。
初めて、血を見たのは、〇歳の時。
目をヒルが潰した時。
片目が真っ黒になって、
もう片方に小さな赤色が見えた。
それが、怖くて、
怖くて
怖くて仕方ない。
でも、今は、血を見たくて仕方ない。
本性ってものかもしれない。
違う、私は HILUになった。
もう誰にも止められない。
もう誰も、私を殺さない。
もう誰も、私を食べない。
そして、ここから、私は、
サキを食べる。