嵩張って。
僕はそっと、振り向いた。
そこに、誰がいるのか、
わかっていた、
だから怖い…
父は、殴るのだろうか、
それとも、また…
でももう、
僕のからだは、子どもじゃない、
僕は意を決した。
「ねぇ…あんた急にどうしたのよ」
「え?」
背にいたのは、姉だった。
この結婚式の主役、
そして、僕の嫌いな人。
姉は、僕の方を掴んで制止し、
疑問を持った顔で、僕を見ている。
僕も、驚いた顔して、
姉の目を見た。
でも僕は、嫌いな感情が先に出て、
姉を睨み、
言った。
「不愉快なんだよ!お前みたいな狂人の結婚式なんて、
ずっといて楽しいわけないだろ!
もう、俺は縁を切る。
お前ともこれっきりだ」
ずっと言おうと思って、
言えなかったことが、
口から溢れた。
別にこの結婚式が嫌で絶縁したくなったわけじゃない。
ただ、ずっと考えていたことが脳から感情任せに、
出ただけだ。
「だから、離せよ。
父さんが来たら、分かるだろ…
俺は愛されていない。
いないほうが良いんだよ俺は!」
父が来ること、言い訳に、
僕は姉に言う。
姉は、怒りもせず、悲しみもせず。
ただ僕の怒声を聞いた。
でも手だけは、一向に離さなかった。
「父さんなら来ないわよ、
アンタが言った通り、父さんはアンタに興味ないからね」
冷たく姉は言う。
「…別に帰りたきゃ、帰ればいいわ。
でもアンタ、嘘ついてるよね?」
冗談で言ってる顔じゃなかった。
本気で、僕の妄言を疑った。
僕は何も返さなかった。
「私を狂人って言ったわね。
アンタは違うの?この変態」
僕は何も返さなかった。
「それに、アンタは私を嫌いなわけないじゃない。
大好きなんでしょ」
僕は何も返さなかった。
「私が生理のとき、使い終わったナプキンがよくなくなってたけど、
あんた、盗んで食べてたんでしょ」
僕は何も返さなかった。
「いつも、アンタ、生臭かったからね。
それに、私が人を殺したとき、
アンタ見てたでしょ?」
僕は何も返さなかった。
「勃起して、射精、してたよね?
私の殺人姿見て、初めて精通したよね?」
僕は、何も返せなかった。
「全部、人のせいにして、
自分は普通だって、自分を押さえつけて、
私を悪者にして、精神守ってたんでしょ?」
僕は…
「本当は、アンタも狂ってる癖して、
本当呆れる。
認めなよ。
アンタも、クズなんだよ」
僕は…
僕は…
僕は…
僕だ。
僕は僕だ。
僕は僕で僕だ。
そうだ、僕も僕だったんだ。
僕は、姉が大好きだ。
彼女のおりものを、僕は食べた。
口いっぱいに、彼女の味がした。
幸せだった。
彼女が、人を殺すときの、
表情が好きだった。
心から愛してた。
でも、いつの日か、
愛する感情は、
父に潰されていった。
なんか気持ち悪くなってきた。
頭がくらくらする。
やっぱりそうだ。
僕もHILUだ。