お仕置き。
僕の父は、狂ってた。
僕は、出来が悪くて、
いつも、けなされた。
理不尽でかつ、しっかり心に残る傷を、
父は、僕に幼いときから刻み続けた。
弱い僕は、それをずっと黙って聞くしかなかった。
何をしてもけなされる。
それ直せ、どうせ無理か、
そんなんだから、お前は愚図なんだ。
ほんと、死んじまえよグズ。
歩き方が変だ。
ほんと、何もできないな、
なんで二人目なんか作ったんだか。
「足…捻って」
足?ほんととろくさい。
もっと真面目に生きろよ
うっとしい。
文字が間違ってる。
なんでこんな事もわかんないんだよ。
ちゃんと勉強してんのか?
「まだ習ってなくて」
言い訳すんなよ
習ってなくても何となく分かるだろ。
わかるよな?おい?
「わ、わかん‥ない」
”ドン”
お腹を蹴られた。
鬱陶しい、
言い訳ばっかしてんなよ。
死ねよ。
死ね。
マジで死ねよ。
食べ方きたねぇな、もっとマシな食い方ねぇのか。
「ごめんなさい…」
はぁ、もう食うのやめろ、
さっさと勉強してこい。
おい、なんで泣いてんだよ、
泣くのやめねぇと追い出すぞ。
マジで、なんでお前なんかに金出してんだろうな。
優しいママに甘えすぎなんだよゴミ、
マジで、金あるだけのあのアマ、
なんでお前なんかに優しいんだろうな。
父は、僕だけに、
家に中で僕だけに、
ひどいことをした。
そして、僕が十歳になった頃。
父は別の方法で僕を傷つけ始めた。
最初、僕は、殴られるのかなと思った。
でも違った。
父は、縄を持っていた。
父はベルトを持っていた。
父は、ムチを持っていた。
そして、僕のからだに、
いたずらした。
最初は血が出た。
なんにもしてないから
裂けて血が出た。
治るまで、部屋から出してもらえなかった。
その間、ずっとお尻が痛かった。
そして治ったら、また挿れられた。
今度は裂けなかった。
でも、やってるとき、
父は首を絞めるから、
跡が残った、
また、閉じ込められた。
僕は、逃げたかった。
でも無理だった。
僕は弱かったから。
強かったのは、心だけ。
貧弱なからだで、僕はなにかできるわけでもなかった。
そして…僕は、十五年、
父にすべて潰された。
十六になると、
父は僕への興味をなくし、
僕を家から追い出した。
それが凄く嬉しかった。
やっと、自由を手に入れた気がした。
僕は、母からもらった金で、
住む家を得た。
そして、なんとか、
書き物の仕事につけるようになった、
三年間。
一人は、とてつもなく、
素晴らしく。
自由だった。
僕は毎日が楽しかった。
そんなある日、
大嫌いな姉から手紙が届いた。
結婚式への招待状だった。
隣町の大きな教会で、
華やかな式を挙げるのだと。
僕は心底どうでもよく、
かつ、行きたくなかった。
でももし、これを断ったことで、
この生活が消える。
そんな予感が頭をよぎった。
父は姉を愛している。
逆らえば…
ただの推測だった。
病だ何だ言って、
断ればよかったのに、
僕は、
もう、
行きの馬車に乗り込んでいた。