21/34
滴って。
彼は、私を、
戻してくれる。
そう信じた。
彼が、わたしに口を重ねたとき。
私は泣いていた。
このままずっと、こうしていたかった。
温かい唇が、
とっても温かい
でももう、時間だ。
朝日が登ってる。
明るい光が、彼の顔にかかる。
あの美しい顔が、
もっと見ていたい。
でも帰らないと…
捕まってしまう。
私は立ち上がり、彼の顔見る。
「ごめんなさい」
そう言って、立ち去ろうとした。
だが、
彼は、私の手を掴んだ。
嬉しかった。
本当は、そうしてほしかった。
帰りたくなんて、
なかった。
私は、彼の寝床へ招かれた。
ここならの目にもつかないと、
彼は私を匿った。
私は、どうにか彼に、
お礼がしたかった。
机の上に、カミソリがあった。
多分、彼が、ヒゲか何かを剃るために、
この街で、調達したんだろう。
これなら彼に、最大限の感謝を伝えられる。
このカミソリで、存在価値を産む。
そして、愛を伝える。
見てて。
やるから。
私は。
「見てて。
やるから。」