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噛んで。
彼女は、僕を見て、笑う。
くすくすと、こみ上げる笑いを抑えるかのように。
でも僕は、全く嫌じゃなかった。
彼女が好きになったからだ。
彼女は僕に、質問をした。
名前、なんでここにいるのか、
他愛のない、普通の質問。
僕は隠さず全部話した。
彼女は、僕が話しているときも、
大きな瞳で、僕をずっと見ていた。
それが可愛くて仕方なかった。
それと同時に、僕は、別の感情が湧き出た。
「君はなんだか…不思議な感じがする」
そういうと、彼女も、
同じ感情を持っていること、
嬉しそうに話した。
嬉しかった。
僕は彼女にもっと自分を知ってほしいと思った。
いつの間にか僕はたくさんの話を彼女にしていた。
すると、彼女は、
少し悲しそうな
少しうれしそうな
そんな笑顔を僕に見せた。
そして僕は、彼女に、
唇を交わす。
考えは同じだった。
そして僕は、彼女の名を囁く。
彼女は、いつしか、
泣いていた。