表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HILU  作者: サキ・ヒルズ
19/34

眠くて。

彼は、名乗った。

「僕は『サキ』って言います」


また、運命だと思った。


彼は、つい最近、この街を訪れたのだと言う。

彼の姉が、結婚式を開き、

その招待状を受け取ったのだ。


結婚式は明日。


でも、彼は行きたくなかった。

姉が、大嫌いだったからだ。


それで、街を彷徨いてたら、

私に見つかった。


彼は言う。

私に。


「君は…なにか…特別な感じがする…」


私も彼に、自分も同じだと伝えた。


すると、彼は目を見開いて、

私をみた。


鼓動が高くなってる。


体に触れたわけでもないのに、

空から、たくさんの振動が響く。


これは彼の鼓動。


そして私も。


私は急に、自分の姿が恥ずかしくなった。


血に塗れて、薄汚れた布を腰に巻いて、

上には何も着ていない。


普段と変わらない、いつもの服装。


でも、なぜか急に、

羞恥心が。


彼は、私にとってのアダムなのかも…


すると、彼も目を逸らす。

私の胸を見て、


顔が、赤くなった。


私はそれが、とても嬉しかった。


人を食べる時とは、全く違う快感。


危険な感じがしない。

懐かしい感じがする。


まだ、幸せだと信じてた、

あの頃の。


彼は、私を、


きっと、


元に戻してくれる。


彼からたくさん話を聞いた。


自分には、愛する母がいる事、

ずっと愛されて生きてきた事、

その中で、人を貶して喜ぶ姉が嫌いな事、

今、私といたいと言う事。


反対だった。


私の人生とは全く真反対の人生。


だからこそなのかもしれない。


反対だからこそ、

なぜか惹かれる。


彼は危険に、

私は安全に、


どちらも惹かれ合っている。


私は、どうにか、彼を手に入れたいと思った。


でも、難しい。

求愛なんて、した事がなかった。


知っていたのは…


“ガサゴソッガサ”


「ちょっちょっと!」


サキは、私を制止した。

私は、彼の混乱の意味が分からなかった。


いつも、これをすれば、

皆んな喜んでくれた。


でも、彼は全く喜んでない、

むしろ、私の手を掴んで、

今すぐにも、やめてほしそうだ。


「駄目だ、そんな事しちゃ、

もっと自分を大切にして」


彼の瞳は、真剣そのものだった。


その瞳には、光があった。


潤とした色が私を吸い込む。


私は、サキに、


口をつけた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ