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涙が。
彼は、偶然、そこにいた。
多分なんの意図も、なんの考えもなしに、
そこを歩いていたんだろう。
そして不運にも彼女に見つかった。
それだけの事だ。
でも、彼は他の人間とは違った。
彼もHILUだったのだ。
私が首を食い千切ろうとしたあの時、
彼は、謝った。
多分私にじゃない。
別方向を見ていたからそう思う。
そして、彼は涙を流した。
その時、私は彼に、同じものを感じた。
HILUを感じた。
そして、いつの間にか、
私は、
彼の涙を舐めていた。