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HILU  作者: サキ・ヒルズ
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食べて。

男は、私の体を使い終わると、呼吸する。

そして、形ばかりの感謝をして、

その場を去る。


これの繰り返しだ。

これが、この街で、一番稼げる方法。


仕方がないのだ。


グチャ…グチャ、

今回はいつもと違う。


私が食べている。


脂肪の溜まったこの肉は、

かぶりつくと血と膿が口に溢るる。

しょっぱくて、錆び付いた匂いが、

食欲を旺盛にする。


顔を食べてみる。

頬を齧ると、歯茎が見える。

とてもジューシーの頬の肉は、

噛みきれない程に分厚いのに、

噛めば噛むほど。血が溢るる。


耳を噛む。

ちぎろうとしたけど、途中でちぎれた。

耳は、ホルモンの硬い部分の様な、

そんな食感で汗と血で塩が効いている。


齧った事で、耳が少し千切れかけているので、

切れそうな所から噛んで、ブチブチ切り離す。


今度はしっかり、耳全体を口を頬張る。

耳垢が溜まっていたのか、少しカリカリして、

また塩っけがある。


耳たぶが柔らかくて、甘みがある。

耳を千切ると、中に、色とりどりの肉が顔を出す。


一つ手にとって、ヒュルヒュルっと伸ばすと、

骨と一緒に、よく分からない肉も出てきた。

もう血塗れで、何色かも分からないけど、

口に入れる。

これは…

カニの食べられない所みたいな味だ。


次は目を食べる。

指だと、滑って取れないから、

まずは、瞼を齧りとった。


瞼はなんだか、不思議な食感と味。

表は、皮膚を舐めてるのに、

裏は、生肉を舐めてるみたいに、

遊び心のあるお菓子のように、

楽しませてくれる。


目を潰れなくなった肉の目を取る。


やっぱり手じゃ難しいので、爪を立てる。

すると、一箇所突き刺さり、なんとか取り出せた。

丸い肉を手に持つと、金魚の糞の様に、

サナダムシみたいな肉が目に吸い付いた。

多分、神経だ。


まずは、神経から食べてみる。


麺のように啜ると、

髪の毛のような肉の線が舌に落ちる。


でも、噛むと野菜みたいに、よく分からない体液を

出しながらシャキッとちぎれた。


味は、血の味。


目を食べる。


思っていたより大きい目は、

私の口いっぱいに広がる。


キャンデーの様に、舌で転がすと、

顎が吊りそうだ。


噛んでみる。


噛んだ瞬間、

思っていたのとは別の食感が生まれた。


プチッと風船の様に破裂し、

血を吐き出すものと思いきや。


なんと、しっかり噛みごたえがあり、

感触で言えば、滑らかなミートボールのような、

そんな感触。


ごくん、


飲み込んだ。

また、人間から遠ざかってゆく。


HILUになってゆく。



気になったのは、心臓。


心臓が食べたい。


そう思い、齧り途中のお腹を見ると、

なんと、蛆が湧いている。


気になった。

蛆はどんな味なのだろうか。


いちひき手にとる。

手の上で蛆は、

コロコロと驚異から逃げようと必死だ。


口に入れると、

さっきまでの鉄の味を払拭して、

苦味と酸味が、舌を虐めた。

思わず、鏡を見ると、

舌は真っ黒だ。



穴の空いた腹に、手を入れる。

腸だ。

腸がある。

興味本位で、齧ってみると、

これはぶよぶよでゴムみたいな感触だ。

そして、最悪なのは、

残っていた大便も食べてしまった。


血でうがいをして、さらに探ると、

胃を発見。


取り出して、見てみると、

ビジュアルは、想像していた心臓と少し似ている。

胃液は強いのか、この肉の顔に胃液をかけてみる。


なんと、かなり早いうちに、肉の顔はまるで、

ミートパイのように膨れ上がった。


そして、腎臓、肝臓、肺を避けて、

遂に、心臓にたどり着いた。


肋骨が邪魔だったけど、

ノコギリは便利だ。


心臓。


もう動いてはいないが、今にも動き出しそうな、

そんな形をしている。


高揚感。


人間の動力源。

一体どんな味が、するのだろうか。


そう、思い、口に、入れる。

そして、歯を、立てた。


心臓は、愛の味だ























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