第89話「似た者姉妹」
活動報告にて、
『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』
の書影を公開しました…!
とても素敵なので、
是非是非見てみてください♪
「……っ!」
「いいから、おとなしくしてて」
ドアが開いたことで美咲が視線を向けようとしたので、俺は後頭部を軽く押さえて自分の胸に美咲の顔を押し付ける。
そのまま優しく撫でながら、部屋に入ってきた笹川先生へと視線を向けた。
「あっ、えっと……」
笹川先生は、当然下着一枚という状態ではなく、まるで今から外出するかのようにお洒落な私服を身に纏っていた。
元々出かけているという話だったため、これから出かける――というわけではなく、多分パジャマ姿や寝間着で俺の前に出てくるのが憚られたんだろう。
俺から見た彼女のイメージは、とても優しくて完璧な人――という感じだった。
家族以外にはそういうふうに見せているようなので、俺の前で取り繕っているんだと考えられる。
まぁ、周りに自分を良く見せようとするのは一般的な考えなので、だからどうしたということもないのだけど。
というか、至極当然だな、とさえ思う。
それはそうと、頬がまだ結構赤いので彼女もだいぶ引きずっていたようだ。
中々戻ってこなかったのは、気持ちを落ち着かせていたんだろう。
「大丈夫ですから、どうぞ座ってください」
笹川先生の家で俺が言うのも変だと思いつつ、美咲が落ち着いていないので俺が代わりに笑顔で座るよう促した。
俺と美咲がベッドに腰を掛けているからか、笹川先生は美咲が普段使っている椅子に座って俺たちを見る。
「……なんで、美咲が怒ってるのかな……?」
そして、何を言うか悩んだらしい彼女は、気まずそうに笑いながら美咲が怒っていることを聞いてきた。
敬語ではなくタメ口なところを見るに、俺ではなく美咲に尋ねたようだ。
怒っている理由がわからないというのはあるだろうけど、単純に美咲のことが心配になっているのかもしれない。
「だって――!」
「はいはい、怒らない怒らない」
もう慣れてきた俺は、声を張り上げようとする美咲を宥めながら彼女の口を手で押さえた。
俺はその流れで、すぐに笑みを浮かべて笹川先生に視線を向ける。
「ちょっと、間が悪かっただけなので気にしないでください」
そうフォロをした――のだけど……。
「それだけじゃないよ……! 来斗君のことも誘惑して……!」
せっかく口を塞いだのに、美咲は両手で俺の手を剥がして文句を言ってしまった。
やはり下着姿一枚で現れた時のことを根に持っているらしい。
――いや、正確にはキスを邪魔されたことで、再び下着姿の時の怒りも湧き上がってきた感じか。
「ゆ、誘惑なんてしてないよ……!」
美咲が言ったことに敏感に反応した笹川先生は、元々赤かった顔を真っ赤に染めながら反論をする。
顔が真っ赤になった理由は、多分下着姿で鉢合わせてした時のことを思い出してしまったんだろう。
「あんな、は、裸みたいな格好で、男の子が興奮しないわけないでしょ……! だからいっつも、寝る時もちゃんと服着るように言ってるのに……! それなのにお姉ちゃんは、いつもいつもお風呂から上がると下着姿でうろつくし……!」
裸というのが恥ずかしかったらしく、美咲は言い淀みながら顔を赤くして怒ってしまう。
うん、こういうところは似た者姉妹だな。