第83話「上書きしたい」
左手は美咲の腰へ。
右手は美咲の足の下に入れると、俺は体に踏ん張りを利かせながら腕に力を入れ、彼女を持ち上げる。
「な、なに!?」
それによって美咲は慌てたように俺に抱き着いてくるが、おかげで彼女の豊満な胸がムニュッと形を変えた。
本人は必死に抱き着いてきているので、気が付いていないらしい。
「さすがにそんなこと言われて、座らせておけるわけないだろ」
初心な美咲が口にするなんてよほど頭に血が上っているんだろうけど、指摘された以上は座らせておくわけにはいかない。
だから、膝からおろすのだ。
「ま、待って待って! いじわるしないで!」
しかし美咲はおりたくないらしく、ギュゥウウウウウという感じで抱き着いている腕に力を込める。
「いや、美咲も嫌だろ……?」
普通に考えて、そういうものが当たってるのは嫌なはずだ。
「い、嫌じゃない! だからさっきまで言わなかったんだもん……!」
「それって……」
彼女はしがみついてきているので顔を見ることはできないが、いったいどういうつもりで言ってきてるんだろう?
そう思った俺は、いったん膝の上に戻してみた。
それにより、美咲はゆっくりと俺から体を離す。
見れば、顔は真っ赤で涙目になっていた。
「す、好きな人のだから、嫌なわけないじゃん……」
よほど恥ずかしくて無理をしているんだろう。
モジモジとしながら言ってきた美咲は、顔を隠すようにすぐに俺の胸に押し付けてきた。
散々初心な反応を見せていたのに……この子、実はむっつりか……?
「反応に困るんだが……?」
こういう経験がなかった俺は、どう返していいのかわからなくなる。
というか、想定外すぎるのだ。
美咲が指摘してきたことも、美咲が受け入れ体制にあることも。
「そ、そんなこと言われたって、私だって困る……」
「いや、言ってきたのは美咲だろ……?」
「来斗君が、お姉ちゃんに興奮するのが悪い……」
そんな無茶苦茶な……。
しかも、何も笹川先生だけが要因ではないんだが?
確かに大きな部分を占めてるのは、彼女の下着姿ではあるのだけど。
「さっき美咲だって、興奮するもんだって言ってたじゃないか……」
あんな扇情的な姿を見せられて興奮しない男がいたとしたら、それはもう聖人だ。
ただの一般学生の俺には、無理に決まっている。
「それは、そうだけど……! こういうのは、理屈じゃないんだよ……! 彼女として、彼氏が他の女の子に興奮してたら嫌なの……!」
美咲は押し付けてきている顔をグリグリとし始める。
不満をアピールしているんだろう。
「ちゃんとわかってるから安心してくれ。それにあれは事故なんだから、俺に怒るのはまだしも笹川先生に怒るのはやめてほしい」
おそらく笹川先生はかなりショックを受けているだろうし、ああなった元凶は俺たちのほうだ。
その上美咲が責めてしまったら可哀想だし、姉妹間でギスギスもしてほしくない。
「うぅ……」
美咲は納得していないようで、更にグリグリとやってくる。
俺は怒りを収められるように頭を撫でるが、それでも駄目らしい。
だいぶ根に持っているな……。
「仕方がないってことは、わかってるんだろ?」
美咲はドジだったり天然なところはあるが、決して頭が悪いわけじゃない。
自分に落ち度があったことはわかっているだろうし、笹川先生がノックをしなかったこと以外は悪くないこともわかっているはずだ。
それでも引きずっているのは、単純に感情が抑えきれないだけだろう。
「わかってる……わかってるけど……上書き、したい……」
「……はっ?」
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