表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/137

第78話「責任を取って」

 やっぱりこの子、ずるいと思う。

 そういう場(・・・・・)がある(・・・)ということだけこちらに伝えて、俺から誘うようにしたいようだ。


「みさ――」

「~~~~~っ! や、やっぱり、なし! 今のなし……!」


 名前を呼ぼうとすると、美咲は勢い良く俺から離れてしまった。

 そして、両手で顔を押さえながら、ブンブンと横に振っている。


 らしくないと思ったけど、やっぱり無理をしていたようだ。


「付き合い始めたからって、別に無理しなくていいんだぞ?」


 まじめな美咲は、それらしいことをしないといけないと思ったのかもしれない。

 だけど、実際は自分たちのペースでいいのだ。


 そりゃあ、付き合ったその日でやる(・・)って男女もいるだろうけど、さすがにそう多くはないと思う。

 ましてや、初めてなら尚更だ。


「無理、は……してないけど……。来斗君と、離れたくないってのは……本当だし……」


 美咲は真っ赤に染めた顔のまま、両手の人差し指を合わせてモジモジとする。


 んん……?

 この反応は……。


「離れたくないから、お姉さんの家でもう少し一緒にいようってことか?」

「えっ、そうだけど……?」


 俺の質問に対し、美咲はキョトンッと小首を傾げる。


 この、天然は……!

 あんな言い方されたら、普通勘違いしてしまうだろうが……!


 俺は文句を言いたくなる気持ちが心の底から湧き上がってくるが、本人がわかっていないのでグッと我慢をした。

 これが素なのが、尚のことタチが悪い。


「じゃあ、なんで悶えたんだよ……?」


 あれが、そういう(・・・・)誘いじゃないんだったら、恥ずかしがる必要もないと思うが。


「だ、だって、あんな甘えるようにおねだりするの、恥ずかしかったんだもん……! 私のキャラじゃないし……!」


 美咲は胸の前で両手をグッと握り、一生懸命アピールをしてくる。


 うん、この子は何を言っているんだ?

 散々甘えてきていて、今更過ぎるんだが……?


「安心してくれ、少なくとも甘えん坊は美咲のキャラだ」

「はうっ!?」


 現実を突きつけてやると、美咲は苦しそうな声を出した。

 やっぱり、自覚はしていたらしい。

 照れ隠しで誤魔化そうとしていただけだろう。


 それはそうと、やはり先程撤回した際に悶えていたのが気になる。

 甘えん坊の自覚があるなら、結局甘えてきているのだから同じだと思うが……。


 単純に、今までは半ば無意識で甘えていたけれど、さっきのは意識して甘えたから恥ずかしかったとか、そういうレベルだろうか?

 甘えん坊のことは、後で我に返って思い出した時にでも十分自覚するだろうから、本人が甘えてきている時は無意識でも不思議ではない。


「お、おかしいんだよ……? だって私、昔はこんな感じじゃなかったもん……」


 なぜか無駄な抵抗を始める美咲。

 確かに学校で知っていた彼女は、こんな甘えん坊な姿は見せていなかった。

 むしろ凛としたところがあったり、優しくて上品さが伺えたりするような、人を惹きつける性格だっただろう。


 しかし――偽カップルになってからは、割と最初の頃からベタベタしていた気がするんだが……?


「来斗君が、私をこんな甘えん坊にしたんだよ……。絶対そうだもん……」

「つまり?」

「責任、取ってください……」


 美咲は恥ずかしそうにしながらも、上目遣いでこちらに訴えてくる。


 ふむ……?


「彼氏になったんだから、責任は取ってるんじゃないか?」


 少なくとも、甘えん坊になった美咲を甘やかす立場にはなったと思う。

 ――元々そうだった、ということは置いておいて。


「離れたくない気持ちも、()んでください……」


 どうやら今の美咲は、ただ甘やかすだけでは駄目らしい。

 なるべく長く一緒にいろ、ということなのだろう。


「じゃあ、撤回しなければよかったのに」


 少なくとも、美咲が望むなら少しの間マンションで一緒にいるくらいはできた。

 それを撤回したのは、美咲だ。


「そ、そういう正論は、やめてほしいです……!」


 ツッコミを入れたことで、美咲は慌てたように文句を言ってくる。

 図星だったようだ。


「とりあえず、まだ一緒に居たいってことでいいのか?」


 俺は笑みがこぼれるのを我慢しながら、首を傾げて美咲を見つめる。

 回りくどく責任がなんたらと言っているが、彼女が望んでいるのはそこだろう。


「それは、さっきも言いました……」


 美咲はモジモジと体を揺すりながら、視線を斜め下へと逃がしてしまう。

 もう言わすな、ということのようだ。


「じゃあ、笹川先生のマンションへ行くか?」


 だから俺は尋ね方を変える。

 すると――。


「来斗君が、いいなら……」


 美咲は、ギュッと俺の服の袖を指で摘まんできた。

 言葉では俺の意思を優先しているようなことを言いながらも、体が放す気がないと言っている。


 本当に、めんどくさい女の子だ。

 だけど、そこがまたかわいいと思ってしまう。


「母さんに連絡しとくよ」


 そのままを言うわけにはいかないけど、美咲のところにお邪魔してくるという旨を伝えておこう。

 さすがにこの時間なら相手の親御さんも家にいると思って、邪推はされないはずだ。


「あっ、私もお母さんたちに連絡しておくね。お姉ちゃんのところに泊まるって」

「…………」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』5月23日1巻発売!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
数々1巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』8巻発売決定です!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊び6巻表紙絵
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』コミック2巻発売中!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊びコミック2巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  

― 新着の感想 ―
と、泊まる!?
偽のカップルから本物のカップルになっての帰り道に姉の家で少し時間を潰すつもりが美咲はお泊り!?この子は自分が何を言ってるか分かってますか~?これが天然なのか!
こんなに可愛い恋人がいたら最高ですね さらなる甘々の展開を期待してます〜
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ