第61話「釘」
「いつか、壊れる……」
お母様の言葉を、私は思わずオウム返ししてしまう。
「だって、そうでしょ? 来斗のことだから、一度偽彼氏になった以上は、高校を卒業するまでは偽の恋人でいると思う。でも、卒業した後は? 来斗に好きな人ができていたら? 今の関係を、美咲ちゃんは本当に続けていけると思っているの?」
やはりお母様は、私が来斗君のことを本気で好きになっていることに気が付いている。
だから、こんなことを言ってくるんだ。
私だって、いつまでもこのままでいいとは思っていない。
お母様の言う通り、きっとこの関係は高校を卒業すると同時に終わる。
でも――まだ、一年以上先の話だ。
下手なことをして、今の関係を壊すようなことにはなりたくない。
来斗君が私を傍に置いてくれているのは、偽彼女だからこそなのかもしれないのだから。
本当の彼女になろうとなんてしたら、遠ざけられるかもしれない。
彼が他人と親しくしたがらないのは、最初からわかっていたことだ。
ましてや今は、気が付いてしまった。
心愛ちゃんがいる以上、来斗君が彼女を作ろうだなんて思わないことを。
きっと、告白をしても振られるだけ。
それで今の心地いい居場所がなくなるなんて、絶対に嫌だ。
そんなリスクを負うくらいなら――せめて卒業までは偽彼女として彼の傍にいて、卒業をする頃に告白をしたらいいと思う。
もしかしたら、それまでの間に来斗君が私のことを気に入ってくれて、彼から告白をしてくれるかもしれないのだから。
「続けていけるとは、思っていません……。ですが、焦って何か行動をするほうが、却って今の関係を壊してしまうかと……」
私は思ったままのことを、お母様に伝える。
すると――
「先延ばしにしている間に、来斗に好きな人ができない保証はないわよ? そしてそうなっては、もう手遅れだってことはわかっていてほしいわ。だってあの子は、一途だから。好きな人がいるのに、他の人の告白を受けたりなんてしないわ。それがどれだけかわいい子であろうと、ね?」
――お母様に、釘を刺されてしまった。
昨日更新できてませんでした~(ノД`)・゜・。







