第46話「嫌な予感」
「――んっ……」
もう太陽が真上に上り始める時間帯、ベッドで寝ていた心愛がゆっくりと目を開けた。
昨日海ではしゃいだ心愛は、帰るころにはかなり疲れていた。
だから今日も、こんな時間まで寝ていたんだろう。
俺も普段なら朝のうちに起こすが、今日は寝かせておいてあげた。
「起きた?」
「んっ……だっこ……」
心愛は上半身を起こすと、寝ぼけ眼で俺のほうを見ながら、両手を広げた。
「よいっしょっと」
「…………」
抱き上げると、心愛はすぐに顔を俺の首元に押し付けてくる。
そのまま寝ようとしているようだ。
寝るならベッドのほうが楽だろうに……相変わらず、甘えん坊だ。
仕方がないので、俺はそのままリビングへと向かう。
「――あら? 眠ってるのに連れてきたの?」
リビングに入ると、テレビを見ていた母さんが俺たちに視線を向けてきた。
今日は仕事が休みなので、のんびりとしていたのだ。
「いや、起きたんだけど、すぐ寝ちゃったんだ」
「そう……ベッドより、お兄ちゃんの腕の中がよかったんでしょうね」
母さんは優しい眼差しで俺たちを見つめてくる。
普段は、心愛が起きる頃には仕事に出ているし、心愛が寝た後に帰ってくることも多い。
寝ているところを起こさないよう寝顔を見に行ったりはしないので、こうして娘の姿を見るのは感慨深いものでもあるのだろう。
「抱っこする?」
「いいわ、そのまま寝かせておいてあげて」
一応聞いてみるも、断られてしまった。
起きてしまう可能性があるので、遠慮したんだろう。
「お昼ご飯はもう少し後ね」
俺と母さんは既に朝ご飯を食べており、心愛が起きたら昼ご飯を食べる予定だった。
つまり、また心愛が寝てしまった今は、食べる時間を遅らせるということだ。
まぁ、まだお昼には少し早いくらいの時間なので、何も問題はないだろう。
そんなやりとりをしていると――。
ピンッポーン♪
インターフォンが鳴った。
「あら、何かしら? 通販でも頼んだ?」
「いや、何も頼んでないけど?」
あまり通販を利用するということがない。
必要があれば、母さんが頼むくらいだ。
普段この時間なら美咲の可能性が高いけど――今日は母さんの仕事が休みなことを、事前に伝えている。
だから、彼女でもない。
「じゃあ、セールスかしらね」
「俺が出ようか?」
「いいわ、心愛が寝ているんだし、私が出てくる」
そう言って、母さんは部屋を出ていった。
すると――。
「あらあら、まぁまぁ!」
何やら、弾んだ声が玄関から聞こえてきた。
……嫌な予感がする。
そう思ったのも束の間――。
「来斗、すっごくかわいい彼女さんが来たわよ~!」
嫌な予感は、的中したようだ。
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