第44話「幸せそうなカップル」
「…………」
事情聴取から解放された後、美咲は俺の腕から離れなくなった。
昼食を食べ終わった今も、テントで俺の腕に抱きつき、肩に頭を乗せてきている。
水着姿で抱きつかれているので、俺の心臓に悪かった。
「あはは……べったりですね」
俺にくっついて離れない美咲を見つめながら、笹川先生が仕方なさそうに笑みを浮かべた。
事情聴取の際に引率者である笹川先生も呼ばれたので、彼女は事情を知っている。
妹のべったり具合の理由もわかっているだろうから、それ以上何かを言ってくることはない。
「まぁ、怖い思いをしたわけですし……仕方ないかと」
そう答えたのは、先程からジッと俺たちを見ている鈴嶺さん。
彼女は笹川先生の隣に座っているのだけど、なぜかずっと俺たちを見つめていた。
この状況を見つめられるのは、かなり恥ずかしいのだが……。
いったい彼女は今、何を考えているのだろうか?
心愛に関しては、呑気にお昼寝タイムだ。
笹川先生に膝枕をしてもらい、気持ちよさそうにスヤスヤと眠っている。
正直、少し羨ましい。
「美咲、海に入らなくていいのか?」
「今はいい……」
かれこれ二時間くらいこうしているので声をかけてみたのだけど、美咲はこのままでいたいようだ。
やはり、ナンパ男たちのせいでメンタルにきているんだろう。
海に入りたそうな鈴嶺さんには申し訳ないが、今は美咲を優先させてもらう。
「じゃあ、このままゆっくりしておけばいいから」
「んっ……」
優しく頭を撫でると、美咲は気持ち良さそうに目を細める。
助けたおかげで、美咲の懐き具合が増してる気がした。
要は、それだけ信頼してもらえているんだろう。
こういうふうに甘えられて、悪い気は全然しない。
「ナチュラルに頭撫でてる……」
「私たちがいても、おかまいなしですね……」
何やら俺たちを見ながら、笹川先生と鈴嶺さんがコソコソと話しているのだけど、気にしないでおこう。
だいたい何を話しているかは想像がつくし。
それよりも、今は美咲を癒すことが先決だ。
――くそ恥ずかしいけど。
「ねぇ、来斗君……」
「ん?」
名前を呼ばれ、俺は視線を美咲へと戻す。
すると、彼女は潤んだ瞳でジッとこちらを見ていた。
「これからも、頼りにしてるよ……?」
それは、これからも他の男たちから守ってくれってことだろう。
「あぁ、そうしてくれ」
元々、周りの男子たちから美咲を守るために、偽彼氏を引き受けたようなもの。
これからも俺は彼女の防波堤として、他の男たちには手出しをさせない。
「ふふ……」
俺が頷くと、美咲はとてもご機嫌な様子で、俺の腕を抱いている腕に、ギュッと力を入れるのだった。
――俺たちは本当は偽カップルなのに、もう誰の目から見ても、本物のカップルのようにしか見えないだろう。
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