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第37話「修羅場(?)」

「――心愛ちゃんとは、私が浅瀬で一緒に遊んでおきますね」


 準備体操を済ませ、海に入った際に言われた衝撃の言葉。


 嘘だろ……?


「いや、あの……」

「幼いので、あまり深いところには行かないほうがいいと思うのです。ですが、美咲や氷華ちゃんは深いところで遊びたいと思いますので、白井さんは二人と一緒に行ってください」


 ニコニコとした素敵な笑顔で、悪気なく言ってくる笹川先生。

 むしろ、親切心で言ってくれている。


 しかし――俺は、この二人と遊ぶより、心愛と遊んでいたい。


「心愛は、お兄ちゃんと遊びたいよね?」


 二人を見捨てるわけではないが、心愛から目を離したくない俺は、心愛に尋ねてみる。

 何よりも優先しないといけないのは、幼い子である心愛の気持ちだろう。

 

 そして、心愛は――

「せんせぇいとあそぶ……!」

 ――俺ではなく、笹川先生を選んだ。


「…………」


 言葉が出てこず、思わず固まってしまう。


「どんまい」


 俺の心情を察したんだろう。

 鈴嶺さんが口元に右手を当てながら、小刻みに体を震わせて肩に左手を置いてきた。


 絶対、笑うのを我慢している。


「ほ、ほら、お姉ちゃんとこうして遊べる機会がそうそうないから、心愛ちゃんはお姉ちゃんと遊びたいだけだよ……!」


 逆に美咲は、頑張って笑顔を作りながらフォローをしてくれた。

 こういう時、わかりやすく性格が出ると思う。

 やっぱり、美咲は優しい。


「まぁ私も、最初は浅瀬で遊んでいいと思うけど……」


 そう言いながら、鈴嶺さんは意味深にチラッと心愛を見る。


「せんせぇい、のれたぁ!」

「あっ、凄い。さすが心愛ちゃんだね」

「んっ、えへへ……!」


 心愛は既に俺なんかに目もくれず、イルカの浮き輪に乗りながら笹川先生にくっついていた。

 幼いのに、器用なまねをしている。


 そしてとても幸せそうなので、俺たちなんてむしろいないほうが良さそうだ。


 そっちのほうが、心愛は笹川先生を独り占めできる。


「俺たちが離れると、笹川先生がナンパされるんじゃないか……?」


 とりあえず、心愛が楽しそうなのでもうそっちはいいのだけど、笹川先生のことが心配だ。


 良くも悪くも、笹川先生はとても魅力的な人なのだから。

 

 彼女の魅力は、美咲と変わらないレベルで高く、人によっては若い美咲よりも、妖艶さのある笹川先生のほうがいいと言うだろう。

 なんせ、肉付きがいいせいで、見た目がエロい。


「子連れに、そうそう手を出す人はいないと思うわ」

「うん、旦那さんが近くにいるかもしれないからね」


 しかし美咲たちは、心愛がいる限り安全だと思っているようだ。


 まぁ確かに、言われてみればそんな気もする。

 俺だったら、彼氏どころか旦那さんがいるような相手は、まず手を出さない。


 それに、この浅瀬なら家族連れがよく遊んでおり、心愛が泣き叫べば誰かしらが助けてくれるだろう。


 そういうことへの機転は、なぜか利く子だからな。

 はてさて、誰に似たのやら……。


「美咲と鈴嶺さんは、深いところに行きたい感じか?」


 笹川先生はそう言っていたけど、美咲たちが口にしたわけではない。

 だから、一応聞いておく。


「まぁ、そうね。海に浮いて、ゆっくりしたいかも」

 

 それは、海の必要があるのか……?

 と聞きたくなったが、余計なことは言わないでおく。


「私はどっちでもいいんだけど……それなら、二人用のボート型の浮き輪を、膨らませてくればよかったね」


 海は浮かびやすいから、別に浮き輪がなくても短時間遊ぶ分には大丈夫だが、のんびりくつろぐなら浮き輪があったほうが楽だ。


 だから、美咲もそう言ったんだろうけど――。


「ナチュラルに、二人きりになれる浮き輪に誘うなんて……さすがね」

「――っ!?」


 俺が言いたいことを鈴嶺さんが代弁してしまい、それによって美咲の顔が一瞬のうちに赤くなった。


 図星――というわけでもないだろう。

 何も考えておらず、ただ天然を発揮していただけだ。


「わ、私は別に、そっちのほうが運ぶ手間も、膨らませる手間もかからないって思っただけで……! てか、別に来斗君と一緒に乗るなんて、言ってないもん……!」

「はいはい、そうね」


 言い訳みたいなことを美咲が言うと、鈴嶺さんは両手の平を天へと向けながら、鼻で笑うようにソッポを向いた。


「流さないで!?」


 当然、美咲はツッコミを入れる。

 鈴嶺さんはやっぱり、美咲を弄るのが好きなんだろう。


「ボート型のがいいなら、それを膨らませるぞ?」


 とりあえず、一々付き合ってられないので、俺は話を進めることにする。

 放っておいたら、俺にも火の粉が飛んできかねないからな。

 特に、鈴嶺さんはそういうことをしてくるタイプの人間だ。


「あっ、えっと……」


 先程の二人きりに――という話があった手前、美咲は頷きづらいようだ。

 だけど、断りもしないということは、ボート型のがいいんだろう。


「いったん荷物のところに戻るか」


 ということで、俺は先に歩いて戻ろうとしたんだけど――。


「ちょっと……! 動く時は、私たちから離れないようにして……!」


 慌てたように、鈴嶺さんが俺の腕を引っ張ってきた。

 あまりにも突然だったので、俺は驚いてしまう。


「そんな、必死になって掴まなくても……」

「あなたが離れてしまうと、ナンパ男が来ちゃうのよ……!」


 どうやら、鈴嶺さんはナンパをかなり警戒しているようだ。

 そのせいで、俺に離れてほしくないらしい。


 まぁ、人目を引くこの二人に男の影がなければ、ナンパ目的で来てる男たちの餌食になってしまうか……。


「わかった、気を付けるよ」

「えぇ、そうして」

「…………」


 あれ、手を放さないのか……?


 てっきり、話がついたので離れるものだと思いきや、普通に俺の腕を掴んだまま隣を歩き始める。

 まさか、捕まえておかないと逃げる――なんて思っていないだろうし……。


 当然、こんなことをされていれば――。


「ひょ、氷華ちゃんも、そういうことしたらだめ……!」


 彼女役である美咲が、怒ってしまう。


「……うっかりしてたわ」

「そんなうっかりある!?」


 パッと手を放した鈴嶺さんに対し、美咲は更にツッコミを入れる。

 俺も同じ気持ちだ。


「次は気を付けるわよ」

「…………」


 素っ気ない態度で軽く流す鈴嶺さんを、美咲は疑うように見つめる。

 何か言いたそうだ。


 そして――

「えいっ……!」

 ――何か言いたくても言えなかった美咲は、ギュッと俺の腕に抱き着いてきた。


 大きくて柔らかい二つの物体が、俺の腕へと押し付けられている。


「「…………」」


 おそらく、先に美咲が疑うように見つめたからだろう。

 不機嫌そうに無言で、鈴嶺さんも美咲を見つめ返していた。


 おかげ、周りでは――

「「「「「修羅場か……!?」」」」」

 ――と、無責任に盛り上がっている。


 いや、なんでこうなるんだよ……?

話が面白い、美咲、氷華がかわいいと思って頂けましたら、

評価(↓の☆☆☆☆☆)やブックマーク登録をして頂けますと幸いです(#^^#)!!

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