表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/137

第30話「姉の想い」

「――美咲、苦しくないか……?」

「だ、大丈夫……」


 現在、後部座席で俺と美咲はくっついて座っている。

 お互い半袖なので、肌がピトッと触れており、なんだか気恥ずかしい。


 家でくっついていたことくらいあるのに、こうも恥ずかしいのは――。


仲睦(なかむつ)まじいわね~」


 この、楽しそうに助手席からニマニマと見てくる、鈴嶺さんのせいだ。

 絶対楽しんでいる。


「にぃにとねぇね、なかよし……!」


 心愛も、嬉しそうに頷いている。

 この子の場合は素直に喜んでいるので、まだいいのだが……。


「氷華ちゃん、楽しそう……」

「そんなことないわよ?」


 美咲の言葉に対して、ニヤッと笑いながら首を傾げる鈴嶺さん。

 言葉と態度が合っていない。


「私としても、白井さんが美咲と仲良くしてくださっているのは、とても嬉しいです」


 鈴嶺さんをジトーッと見ていると、笹川先生が笑顔で話しかけてきた。

 やはり姉としては、妹のことが気になるんだろう。


「美咲は素敵な子なので、誰とでも仲良くしていますよ」

「えへへ……」


 お姉さん相手だからわざわざ言葉にしたのだけど、美咲はだらしなく頬を緩めた。

 学校で褒められまくっているくせによく照れるので、意外とお世辞に弱いタイプらしい。


 まぁ俺のはお世辞ではなく、事実を言っただけなのだけど。

 実際彼女は、学校でモテすぎて困っているくらい人気で、誰とでも仲良くできるのだから。


「白井さんの惚気るところを見られるなんて、貴重ですね」

「ただでさえ夏なのに、これ以上暑くするのはやめてほしいわ」


 運転席と助手席から、それぞれ別の感情が向けられる。

 笹川先生はニコニコ笑顔なのに、鈴嶺さんはジト目を向けてきていた。


 おかしい。

 さっきまでからかってきてたんだから、急に不機嫌にならなくていいと思うんだが……?


「別に、惚気たつもりはないのですが……」


 とりあえず、本当に惚気たつもりはないので否定をしておく。


「あれを惚気と言わなかったら、なんだと言うのかしら?」


 思うところがあるのか、笹川先生よりも先に鈴嶺さんが質問をしてきた。

 口元がまたニヤッとなっているので、からかう気満々のようだ。


 どうやら先程の反応も、不機嫌になったんじゃなく、単にわざとジト目を向けてきただけらしい。


「惚気じゃなくて、事実だよ。鈴嶺さんは、学校での美咲の人気を知ってるだろ?」

「たとえ事実だとしても、平然とそれを人前で言うのは、惚気というのよ」


「……そうなのか?」


 友人がほぼいないので、そういった会話をしてこなかった俺は、美咲に尋ねてみた。


「う、う~ん、どうだろうね~?」


 美咲は頬を赤く染めながら、気まずそうに目を逸らす。


 いや、もうそれ、答えを言っているようなものじゃないか?


「本当に、惚気のつもりはなかったんだけどな……」

「惚気を言う人は、大抵自覚してないわよ」


 そうなのか……。

 でも、俺たちって本当は、付き合っているわけじゃないからな……。


 口が裂けても、そんなこと言えないけど。


「来斗君って、直球で褒めてくれる性格してるから、普通の人が惚気るのとはちょっと違うかも……?」


 一応、美咲がフォローをしてくれる。

 それがフォローになっているのかは、怪しかったが。


「惚気るほどに仲がいいことは、素敵なことですよ」


 俺が嫌がっているように見えたんだろう。

 黙って聞いていた笹川先生が、優しい声でフォローをしてくれた。


 だけど、やっぱり俺は惚気た扱いらしい。


「それに、私はこんな幸せそうな美咲を見られて、嬉しいんです。私のせいで、この子は恋に臆病になっていたところがありまして……白井さんとこうして付き合うことができて、ホッとしています」


 ミラー越しに見える、笹川先生の優しい表情。

 妹の幸せを、心の底から喜んでいるのがわかる。


 そして――凄く、胸が痛くなった。


「…………」


 美咲も心苦しいんだろう。

 俺と同じで、胸に手を当てて、気まずそうに顔を逸らしている。


 そんな俺たちを見ていた、鈴嶺さんは――

『自業自得よ』

 ――とでも言わんばかりのジト目を、俺たちに向けてきていた。

話が面白い、美咲がかわいいと思って頂けましたら、

評価や感想、ブックマーク登録をして頂けますと幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』5月23日1巻発売!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
数々1巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』8巻発売決定です!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊び6巻表紙絵
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』コミック2巻発売中!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊びコミック2巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ