表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/137

第26話「不意打ちの褒め言葉」

「――にぃに、だっこ……!」


 近くのスーパーに行くということで、心愛が俺に対して両手を広げてきた。

 やっぱり、こういう時は俺なんだな。


「…………」


 美咲が羨ましそうに俺のことを見てくるが、駄目だ。

 さすがに心愛を抱っこする特権まで、彼女に譲る気はない。


 俺は美咲にとられないよう、さっさと心愛を抱っこした。


「心愛ちゃんは、抱っこが好きだよね?」


 俺の頬に自分の頬をくっつけてきてる心愛を、美咲は覗き込むようにして話しかける。

 やめろ、俺から心愛を奪おうとするな。


 心愛の抱っこする権利は、誰にも渡さない……!


「んっ……!」


 俺の気など知らず、心愛は嬉しそうに頷く。

 だけど、美咲に手を伸ばすことはしなかった。


「優しいお兄ちゃんがいて、よかったね」


 美咲も心愛を抱っこする気はないのか、優しく心愛の頭を撫で始めた。


「えへへ……」


 撫でられるのが好きな心愛は、へにゃぁっと頬を緩ませながらかわいらしく笑っている。

 相変わらず、心を掴まれてしまう笑顔だ。


「それじゃあ、行こっか?」


 美咲は心愛から手を離すと、ニコッと優しい笑みを俺に向けてくる。

 なんだか、バツが悪かった。


「あぁ、行こっか」


 動揺を悟られないよう、俺はすぐに歩きだす。

 心愛は不思議そうに俺の顔を見てきたが、何も言ってはこなかった。


 そうして、外に出ると――。


「あらあら~! らいちゃん、とてもかわいい子を連れてるのね?」


 近所のおばさんに出くわした。

 よりにもよって、この人に出くわすとは……。


「はい、とも――」

「にぃにの、かのじょしゃん……!」


 このおばさんには、美咲のことを『友達』と紹介してやり過ごそう。

 そう思ったのに――心愛が、打ち明けてしまった。

 それにより、美咲は恥ずかしそうに身を縮こませ、ペコッと頭を下げる。

 そして――俺の背中に隠れるように、後ずさってしまった。


 うん、誰がどう見ても、恥ずかしがっている『彼女』だ。


「まぁまぁまぁまぁ!」


 おばさんは、明らかにテンションを上げ、目を輝かせながら俺の顔を見てくる。

 明日には、ここら辺に住む奥様方に、美咲のことが知れ渡ってしまうだろう。


 仕方がない……。


「あの、うちの母親にはまだ内緒にしててください。いずれ、自分で紹介しますので」


 友達だと訂正しても、おばさんはもう聞く耳を持たないだろう。

 一度思い込んだら、人の話を聞かない人だ。

 それなら、せめて口止めをしておくしかない。


 ただ――。


「わかってるわかってる! お母さんには内緒にしておくわよ!」


 うん、全然信用できない。

 母さんは仕事で忙しいから中々会うことはないだろうけど、会った時は真っ先に言われそうだ。


 だけど、疑ったところで気を悪くし、かえって言われかねないので――

「お願いします。それでは、僕たちはこれで」

 ――ここは、早々に逃げるしかない。


 しかし――。


「まぁまぁ、そう言わずに! どうやって、こんなかわいい子をゲットしたの!? アイドル――は恋愛できないだろうから、モデルかしらね!?」


 ハイテンションなおばさんにガシッと肩を掴まれ、逃がしてもらえなかった。

 美咲が超絶美少女で、アイドルやモデルに見えるというのはわかる。

 だから、気になるのは仕方がないが……この人に捕まると、長いんだよな……。


「ねぇね、もでるしゃんなの!?」


 心愛も心愛で、勘違いを始めるし……。


「美咲はアイドルでも、モデルでもないですよ。そうだよな?」

「はい、違います……」


 美咲は、借りてきた猫のようにおとなしい。

 誰にでも神対応をする子だと思っていたけど、意外とおばさんは苦手な部類なのだろうか?


「え~、そうなの!? こんなに綺麗なのに、もったいない……!」

「美咲が綺麗でかわいいのは認めますが……」

「――っ!?」


 俺が返した言葉に、美咲が息を呑んだのがわかった。

 チラッと見れば、顔が赤く染まっている。


 今更、こんな言われまくった言葉で照れなくてもいいと思うが……。


「綺麗だからアイドルやモデルをしなければいけない、というものでもないでしょう。本人が望まない限り、やるものではないでしょうし」


 美咲の様子は気になったが、とりあえずおばさんを放置しておくと面倒なので、笑顔で返しておいた。

 さすがに、そろそろ解放してほしいが……。


「にぃに、おなかすいた……」


 どうやっておばさんから逃げるか。

 そう悩んでいると、心愛が俺の服を引っ張ってきた。

 頬をプクッと膨らませ、拗ねた表情をしている。


「すみません、心愛がお腹を空かしているので、もう行きますね」

「あらあら、それは仕方がないわね。みんな、またね」


 おばさんは先程と打って変わって、笑顔で手を振りながら去っていった。


 幼い子は優先。

 それは、みんなの共通認識だ。

 だからおばさんも、すぐに解放してくれたんだろう。


 こういう時、心愛は空気を読んでくれるから助かる。


「すぐ買い物するから、もう少し我慢してな?」

「んっ、だいじょうぶ」


 一応声をかけておくと、心愛は笑顔を返してくれた。

 本当にお腹が空いてたら悲しそうな表情をするので、そこまで空いていないんだろう。


「よしよし」


 とりあえず、心愛のおかげで解放されたので、頭を撫でておいた。


「…………」

「美咲?」

「う、うぅん、なんでもない……!」


 なんだか美咲がジッと俺の顔を見つめてきていたので、声をかけたらブンブンと首を横に振られてしまった。

 そして俺から顔を背けるように俯いたが、なぜか横顔は赤いままだ。


 まだ先程のことを引きずっているんだろうか……?

 かわいいなんて、言われ慣れているだろうに。

美咲、心愛ちゃんがかわいいと思って頂けましたら、

評価(↓の☆☆☆☆☆)やブックマーク登録をして頂けますと幸いです(≧◇≦)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』5月23日1巻発売!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
数々1巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』8巻発売決定です!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊び6巻表紙絵
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』コミック2巻発売中!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊びコミック2巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ