第23話「お部屋、行ってもいい……?」
「「…………」」
心愛が眠っているため、俺たちの間で気まずい時間が流れる。
俺はあまり口数が多くないし、美咲も男子の家だからか、少し堅くなっているように見える。
何か話題を振ったほうがいいのかもしれないが……黙って、心愛の寝顔を見ているほうが好きだ。
「えっと……」
俺と考えは違うのか、美咲は気まずそうに口を開く。
視線を向けると、なぜか目を泳がせた。
「来斗君のお部屋、行ってもいい……?」
「…………」
そして、またとんでもないことを言い出したので、俺は答えに困ってしまう。
この子、見た目や学校の態度からは想像しづらいが、意外とグイグイ来るよな……。
「あっ、他意はなくて……!」
「この場合、他意しかないような……?」
絶対、ただ俺の部屋に行きたいわけじゃないだろ。
「何か変なこととか…………えっちなこと……がしたいわけじゃなくて……」
俺に疑われていると思ったんだろう。
頬を赤く染めて、恥ずかしそうに弁明をしてきた。
言いづらいなら、無理して言わなければいいのに。
ほんと、まじめな奴だ。
「だいたいは想像がつく。他の人に聞かれた時に、ちゃんと俺の部屋について答えられるようにしておきたいんだろ?」
主に、鈴嶺さんに聞かれた時への対策だろうけど。
切り込んでくる時は、容赦なく切り込んできそうだからな……。
「よくわかるね……?」
「美咲がそっち方面で求めてないなら、それくらいしか理由は見当たらないだろ……」
「~~~~~っ」
あえて言葉にしなかったのに、想像してしまったのか、美咲は顔を真っ赤にして悶え始める。
薄々わかってはいたが、エロ方面に対する耐性はあまりないようだ。
だったら、自分から触れなければいいのにな。
「さすがに一人で行かれるのは不安があるから、俺も行くことになるが……逆に、大丈夫なのか?」
美咲が行きたい理由に共感はできるので止めはしないが、彼氏でもない男の部屋に行く場合、身の危険性が出てくるだろう。
そこを美咲がわかっていないとは思えない。
「来斗君だったら、安全だと思うから……」
「あのな、勝手に思い込んでいるようだけど、俺も男だからな? 間違いは普通に起きるぞ?」
下手に信用されるというのも困る。
手を出す気はないし、過ちも起こす気はないが、それは俺だからだ。
俺と似たような性格の奴がいたとしても、それはそう見せているだけで、実際は美咲に好意を寄せているかもしれない。
そうなった時、美咲が『来斗君の時は大丈夫だったから』――という理由で、同じことをしてしまったら、痛い目を見てしまうのだ。
だから、俺の時から疑うのを覚えていてほしい。
「来斗君って、平然とそういうことを言ってくるのが凄いよね……」
「歯に衣は着せないかもしれないな」
そのせいで嫌われるんだろうけど、言っておかないと本人のためにはならないからな。
「そういうところ……いいと思う……」
まだ先程のことを引きずっているんだろう。
美咲は、ほんのりと頬を赤く染めたまま、嬉しそうに笑った。
そんな彼女に対して、俺は――。
「変わってるな……」
正直に思ったことを伝えた。
しかし――。
「そういうところは、良くないと思います……!」
さすがの美咲も、この言われようは気に入らなかったらしい。
「実際、ド直球に言われるのがいいって、変わってるだろ?」
「来斗君は不器用で、言い方は良くないかもしれないけど、その言葉にはちゃんと優しさが込められているから、いいと思うと言ったんです……!」
余計な解釈をされないよう、細かく噛み砕いて説明をしてくれる美咲。
疲れないのか?
「というか、そういう意味じゃなかったような……?」
話してたのは、歯に衣を着せぬ云々に関してだしな。
「そういう揚げ足取りはいりません……! とりあえず私は、そういう意味でいいと思ったんです……!」
今度は説明したくなかったのか、頬の赤みを先程よりも濃くしながら、強引に押してきた。
こうしてみると、美咲が学校で見せている表情は彼女の一部でしかないんだろう。
深く関わるようになってから、結構印象が変わった。
個人的には、清楚で誰にでも優しい女神様のような彼女よりも、こういう子供っぽいほうが、親近感が湧いて好きだ。
「悪かったよ、茶化して」
美咲が拗ねてしまったので、素直に謝っておく。
こうやって拗ねさせてばかりいると、『いじわる』と言われるのも仕方がないか。
「来斗君は、好きな子にいじわるするタイプなの……?」
まだ気が済まないのか、美咲はジト目を向けてきた。
彼女にこんな目を向けられたなんて言ったら、羨ましがる男子もいるんだろうな。
「それ、『私のことが好きでしょ』って美咲は言ってることになるんだが、自覚しているか?」
美咲は明らかに、その辺考えていない様子だったが、ツッコミたくなってしまった。
でもこれは、美咲が悪いと思う。
「…………いじわる……」
結局美咲は、また頬を膨らませてしまった。
美咲には悪いが、鈴嶺さんが美咲を弄る気持ちがなんとなくわかってしまう。
「俺の性格が悪いなんて、元からわかってたことだろ。好きだからって理由で意地悪するわけでもないから、気にしないでくれ」
「性格は、悪くないと思うけど……」
「…………」
ここまで弄られて、まだそんな考えでいられるのか。
やっぱり彼女は、人が良すぎる。
美咲の中で、『意地悪』と『性格が悪い』というのは、別なんだろう。
「とりあえず、俺の部屋に行くんだったな。心愛をベッドで寝かせられるし、それでいいぞ」
膝の上で寝てくれるのは嬉しいが、体に負担がかかってしまう。
いつ起きるかわからないし、ベッドで寝かせておいたほうがいいだろう。
――まぁ、目を覚ました時、膝の上じゃなくベッドだったら、心愛はいじけるだろうけど。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
明日(2/12)からは夕方更新のみでやっていこうと思います!
※たまに数話更新するかもですが!
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