第20話「幼女のかわいさは偉大」
「ごはん♪ ごはん♪」
現在、美咲がお昼ご飯を作ってくれている中、心愛はご機嫌そうに俺の膝の上で体を揺らしていた。
キッチンからとてもいい匂いがしているので、期待を膨らませているんだろう。
「ふふ、もうすぐできるから、待っていてね」
美咲は、フライパンを左手で持ちながら、ニコニコとして心愛に視線を向ける。
子供好きというのは本当なようで、心愛の相手をする彼女は楽しそうだ。
二人を見ていると、まるで親子のように思えた。
幸せな家庭のようである。
「悪いな、来てすぐに料理をしてもらって」
美咲が家に着くなり料理を始めたのは、家に着いた途端に、心愛が『おなか、すいた……』と目をウルウルさせながら訴えてきたからだ。
本当なら少し休憩したかっただろうに、美咲は優しいから心愛の我が儘に応えてくれたので、俺は感謝をしている。
「いいんだよ、もともと私のせいで待たせちゃってたんだから」
彼女が駅に着いたのは、大体13時頃だった。
昼ご飯を食べるにしては少し遅めではあるが、遅すぎるというわけでもないだろう。
「そう言ってくれて、助かるよ」
「いえいえ」
美咲はそのまま、笑顔で料理をしていく。
いつも作ってくれているお弁当で、美咲が料理上手だということは知っていたが、こうしてみるとやっぱり手際がいい。
普段から料理をしているんだろう。
「…………」
「心愛?」
何を思ったのか、急に心愛は俺の膝から立ち上がった。
そして、テクテクと美咲のほうへと歩いていく。
「――こら、邪魔したら危ないよ?」
心愛が何をしようとしているのかだいたいわかった俺は、すぐに後ろから抱きかかえた。
それにより、心愛の頬がプクッと膨れ上がる。
「むぅ……!」
「火や包丁を使ってるんだから、危ないんだよ」
拗ねた目で訴えかけてくる心愛に、俺はちゃんと説明をする。
美咲に抱き着いて驚かせても困るし、そもそも邪魔になってしまうしで、こうして邪魔できないよう抱っこしておくしかない。
「あらら……心愛ちゃん、料理を見たかったのかな?」
俺に捕まっている心愛を見て、美咲は小首を傾げる。
そんな美咲に対して、心愛は一生懸命両手を伸ばした。
「ねぇね~!」
助けて、と言っているつもりなんだろう。
可哀想だけど、怪我をさせるわけにはいかないから、放してはあげない。
「来斗君、気を付けておくから、近くに来てもらって大丈夫だよ?」
どうやら美咲は、心愛がうろちょろしないよう、俺が抱っこした状態で近付いてこいと言っているようだ。
「いいのか?」
「うん、心愛ちゃんが見たいなら、見せてあげるほうがいいと思う」
「それじゃあ……」
俺は、腕の中にいる心愛に視線を向ける。
俺が視線を向けるとわかっていたのか、心愛も首を後ろに倒して俺のほうを見上げ、ウルウルとした瞳で訴えかけてきた。
仕方がない……。
どのみち、料理しているところを見たいなら心愛の身長では足りないため、俺が抱っこしておかないといけない。
「心愛、暴れたり手を伸ばしたりしたら駄目だからね?」
「んっ……!」
先に注意しておくと、心愛は力強く頷いた。
念のため、心愛が手を伸ばしても包丁や美咲に届かない位置をキープしながら、料理するところを近くで見せてもらおう。
「悪いな、いつも我が儘を聞いてもらって」
「どちらかというと、私のほうが来斗君に聞いてもらってるから、気にしないで。それに、心愛ちゃんに興味を持ってもらえるのは嬉しいもん」
やはり、心愛のかわいさは偉大、ということだ。
「にぃに……!」
「わかったわかった」
心愛が服を引っ張って急かしてきたので、俺は距離感を気をつけながら美咲に近付くのだった。
美咲、心愛がかわいいと思って頂けましたら、
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