第18話「幼女の遊び」
「――ねぇねと、あそぶのぉ!?」
美咲とのデートを明日に控えた夜、心愛にそのことを伝えると、一気にテンションが上がった。
美咲のことを思い出すたびに、『ねぇねはあそびにこないのぉ……?』って聞いてきていたので、会いたかったんだろう。
テンションが上がりすぎてベッドから飛び出そうとしたので、俺は手で心愛の体を押さえながら、笑みを浮かべる。
「お家に来てくれるから、困らせたら駄目だよ?」
元々は、俺たちが付き合っていると学校の連中に信じ込ませるために、街に出て遊ぼうということになっていた。
しかし――よく考えると、この前祭りで結構小遣いを使ってしまったため、遊びに出るのは避けたいと思ったのだ。
その代わりに、教室で周りに聞こえるよう、わざとらしく美咲を家に誘った。
それによって教室内はとんでもなくざわついていたから、ほとんどの奴は信じただろう。
もちろん、事前に美咲とは打ち合わせをしておいたので、彼女が墓穴を掘ることもなかった。
「ねぇねは、もうくる?」
よく聞いていなかったのか、心愛は期待したように小首を傾げる。
「いや、来るのは明日だよ」
「ぶぅ……!」
そして俺の答えが気に入らないと、頬をパンパンに膨らませてアピールをしてきた。
今すぐ遊びたいんだろう。
だけど、こればかりはどうしようもない。
「明日になれば遊べるから、今日は早く寝ようね」
俺は心愛の体に掛け布団を掛け直し、優しく頭を撫でる。
心愛はいつも眠りが深いので、夜に寝かせれば朝まで起きない。
だから、早く寝かせればいいのだ。
そう思ったのだけど――。
「やっ……!」
美咲の話を聞いて目が完全に覚めたようで、寝るつもりはないらしい。
失敗した……。
明日になってから、美咲のことを話せばよかった。
「寝ないの?」
「んっ……!」
心愛は体を起こし、コクリッと頷く。
こうなった時の心愛は頑固なので、言って聞かせようとしても無駄だろう。
放っておけば勝手に眠たくなるだろうし、たまにはいいか。
「おいで、心愛」
「んっ……!」
両手を広げると、心愛はパァッと表情を明るくして、俺に抱き着いてきた。
俺はそのまま心愛を抱きかかえ、リビングへと戻る。
そしてソファへと座り、心愛を膝の上に座らせた。
「アニメ見る?」
母さんの時代とかは録画をして好きなアニメを見ていたようだけど、今ではアニメ配信サイトでお手軽に見られるようになった。
パソコンかスマホがあればいいので、心愛におとなしくしていてもらいたい時には見せているのだ。
しかし――。
「ん~、いい」
心愛は悩んだ末、首を横に振った。
今はアニメを見る気分じゃないらしい。
こういう時の心愛はというと――。
「…………」
俺の手を使って、一人で遊び始める。
俺の両手の平を合わせたり、自分の顔に押し付けたり――あまり考えず、気分のママ遊び始めるのだ。
だから俺は力を抜いて、心愛の好きにさせる。
そうしていると――。
「…………」
俺の顔を見上げてきた。
「どうしたの?」
「えへへ」
声をかけると、心愛は楽しそうに笑みを浮かべた。
そして、また俺の手で遊び始める。
今日はこれで十分なようだ。
俺はそのまま、心愛がウトウトとし始めるのを待ち、心愛が眠ってからはベッドへと運んだのだった。
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