第179話「チャンスありそう?」
「ららら、来斗君!? これはいったい全体どういうことなのかな!? 彼女はどちらさまですか!?」
俺が返事をする前に、過去一かと思うほどに美咲が動揺し、安定しない口調で俺に尋ねてきた。
何やら自身を超える巨乳であり、誰もが目を惹かれそうなほどの美少女が現れただけでも警戒していたのに、俺の名前を知っていることで良からぬ関係を疑っているようだ。
まぁ見たこともない女の子が、急に自分の彼氏のことを下の名前で呼んだりしたら、それも仕方がない気もするが……。
今鉢合わせしたことを嘆くべきか、これが学校じゃなくてよかったと思うべきかは、正直微妙なところだ。
「えっと、そうですが……どちらさまでしょうか……?」
ここで俺まで覚えていて、しかも幼馴染だったなんてことを知られると、美咲が余計にヤンデレ化してしまう。
それだけはどうにか避けたかった俺は、絵里奈には悪いと思いつつ、とぼけてしまった。
ちなみに、一緒にいたのが幼少期だったせいで、苗字は本当に覚えていない。
「――っ。私だよ、絵里奈だよ……! 今はもう名前変わっちゃったけど、ほら志藤絵里奈……! 君や氷華ちゃんと、保育園でよく一緒に遊んでた子だよ……!」
絵里奈はショックを受けて顔を歪めた後、すぐに自身の胸に手を当て、自己紹介をしてきた。
しかも、俺が思い出しやすいように、保育園のことまで持ち出してきている。
おかげで、幼馴染だということを美咲に知られてしまった。
くそ、憶えてなかったら、『あっ、そうなんだ……。そうだよね、もう昔のことだし覚えてないよね』くらいで終わらせてくれることを期待していたのに、まさかこうも必死に思い出せアピールをされるとは……!
保育園時代だって、ただ鈴嶺さんに連れ回されていたから一緒にいただけで、俺たち別に仲良いってほどでもなかったし……!
これが、思い出補正というやつなのか……!?
「幼馴染……? なんで幼馴染がここで突然増えるの……? しかも、こんなにもかわいくて、おっ……も大きいなんて、おかしくないかなぁ……?」
「――っ!? み、美咲? 落ち着け、本当に俺は覚えてないから……!」
絵里奈――志藤さんの反応もあってか、美咲の体がユラ~ッと揺らぎ、瞳から完全に光が消えてしまう。
言いたいことがわからないわけではないが、ここで闇落ちされても俺にはどうしようもない……!
とりあえず、一刻も早くこの場を離れたかった。
しかし――美咲に怯えたのか、志藤さんの妹だと思われる幼女が、ギュッと俺のズボンにしがみついてくる。
そこはお姉さんのほうでよかったんじゃないか!?
と思いながらも、幼女にしがみつかれてしまったせいで、美咲を連れて逃げることができなくなってしまった。
「……あら? 確かにトップアイドルみたいに凄くかわいい子だけど……聞いてた話よりも、私にもチャンスがありそうかも……?」
俺が美咲をなだめていると、ショックを受けながら俺たちの様子を窺っていた志藤さんが、ボソッと何かを呟くのだった。







