第174話「乱入?」
「……♪」
あれから、どれくらい時間が経っただろう?
寝ぼけていたはずの美咲は既に意識を覚醒させており、猫のように頬を俺の胸に擦り付けながら、全力で甘えてきていた。
とても幸せそうなので見ていて心は穏やかになるのだけど、いい加減手が疲れてきた……。
「そろそろ起きないか?」
「…………」
どこかで区切りを付けないと駄目だな、と思った俺は、笑顔で促してみたのだけど――シュンとした、寂しそうな表情で見つめ返されてしまった。
ほんとこの子、こういう表情をすれば俺に効くって学習しちゃってる気がする。
実際、効果抜群なのだが。
「もうそろそろ、心愛たちも帰ってくるんじゃないかな?」
「帰ってきたら、起きればいいんだよ」
美咲はそう言いながら、ギュッと俺の体を抱きしめ、グリグリと俺の胸に顔を押し付けてくる。
まぁ、これで離れてくれたら苦労しないよな。
「心愛の場合足音が小さいから、いきなりドアを開けて――」
そう説得を試みた時だった。
ガチャッと、部屋のドアが開いたのは。
そう……玄関ではなく、部屋のドアだ。
「――にぃに、ねぇね、ただいま……!」
直後、かわいらしい天使が上機嫌で部屋に飛び込んできた。
おそらく、笹川先生と一緒に出掛けたのがとても楽しかったのだろう。
だけど、不意を突かれた俺と美咲は思わず固まってしまった。
「……? にぃにたち、なんでベッドにはいってるの? ねんね?」
普段朝と夜以外俺がベッドに入らないことを知っている心愛は、不思議そうに小首を傾げて聞いてくる。
その後ろでは、笹川先生が困ったように笑いながら立っていた。
大方、家に入るなり心愛が俺たちの部屋を目指して走り出し、慌てて笹川先生が追いかけてきたのだろう。
足音をさせなかったのは、上品な女性ゆえの技術かもしれない。
というか……それなら、玄関から大きな声で帰ったことを教えてくれたらよかったのだが……笹川先生は、そういうはしたないことしそうにないもんな……。
母さんは、親の居ぬ間に――などということを俺たちがしないだろう、という信用があって心愛を止めなかった感じだと思う。
「ちょっと、眠たかったんだ。もう起きるよ」
「ここあも、ねんねする……!」
美咲の格好が格好だけに、教育上よろしくないので心愛に見られないよう俺がベッドを出ようとすると、逆に心愛がベッドに駆け寄ってきた。
掛け布団で美咲の体は隠されているが、さすがに心愛がベッドに入ってしまうと彼シャツ姿がバレてしまう。
心愛は純粋にズボンを穿いていないことを疑問に思ったり、母さんたちに言ってしまったりする可能性がある――というか、既に笹川先生が入口にいる時点で、やばい。
美咲の彼シャツ姿なんて見られたら、完全に事後だと思われてしまう。
「もう夕方だからね、寝たら夜寝れなくなるから駄目だよ?」
俺は慌ててベッドから出るなり、即行心愛の体を抱っこした。







