第166話「本気の彼女」
「頭、載せてもいいぞ?」
美咲の隣に転がった俺は、折り曲げている自身の左腕で小さく屈曲と伸展を繰り返しながら、優しく美咲に伝える。
まさか俺がそんな提案をしてくると思っていなかったらしく、美咲はあからさまに驚いた表情をするが、すぐに上半身を起こした。
「い、いいの……?」
「あぁ、たまにはな」
言葉で確認してきながらも、体は既に腕枕をする気満々な美咲に、俺は笑顔で頷く。
それによって美咲はパァッと表情を明るくしながら、俺の腕にゆっくりと頭を載せてきた。
「えへへ……頬が緩んじゃうよ……」
よほどお気に召したらしく、美咲はかわいらしい声を漏らす。
言葉通り、表情はだらしなく緩んでいる。
まるで幼い子供かのような彼女の頭を、俺は腕枕をしている左手で優しく撫でた。
「んぅうう……」
頭も撫でた効果はすぐに見え、美咲は上機嫌になりながら俺の首元に顔を擦り寄せてくる。
とりあえず、これで時間を稼げそうだ。
――そう、俺から腕枕を提案したのはもちろん裏があるのだ。
こうして彼女の気を逸らさなければ、一緒に寝る俺に対して彼女が求めるものなんて明白だろう。
昨晩……というか、明け方までずっと求められ続けたのだから。
さすがに母さんも笹川先生も、心愛すらも家にいない状態でそれをされてしまうと、俺の理性がもたない。
「美咲はこれが好きか?」
「んっ、もちろん……」
美咲は息に熱を秘めながら返事をする。
その間も俺の首元から顔を放そうとしない。
まぁ、スイッチを入れてしまったところはあるが……こうして甘えてくる分には好きにさせておこう。
そう思っていると――ヒンヤリとした美咲の太ももが俺の太ももへと当てられる。
そして、俺の足と足の間に割り込むように、美咲はつま先から順に俺の足の間へ自身の足を入れてきた。
「何を……!?」
「男の子って、こういうの好きかなって……。自分からするの、恥ずかしいけど……」
驚いて尋ねると、美咲は顔を赤く染めながら残ったほうの足を俺の足の上に載せてきた。
明らかに恥じらっているのに、彼女の体は俺の体に絡みついてくる。
どうやら美咲はまだ諦めていなかったようだ。
同じ人間とは思えないくらいに柔らかい肌をした彼女の足は、ヒンヤリとしていることもあり確かに気持ちがいい。
正直病みつきになりそうだ。
その上、お互いの足を絡める行為は、恋人のいちゃつきの中で定番だとも思う。
思うが――これは今の俺にとって、危険以外の何ごとでもなかった。
こんなことされたら、本当に理性を飛ばされてしまう。
「やりすぎだ……」
俺は美咲の足から逃れようと自身の足に力を込める。
しかし――
「だめ、にがさない……」
――美咲は両足に力を入れ、俺の足が動かさないように挟んできた。
この子、本気だ……!







