第151話「さすが姉妹」
「み、美咲、これは……」
俺は笹川先生のむ――体で隠れて美咲の表情は見えないが、笹川先生が先程とは別の意味で動揺しているのがわかる。
声のトーンから察しても、美咲はかなり怒っているのだろう。
とりあえず、笹川先生が動揺してくれたおかげで腕は緩んだので、俺はなんとか彼女の腕の中から抜け出す。
そして、美咲を止めようと彼女に視線を向けると――美咲の表情よりも先に、体へと視線が向いた。
なぜか彼女は、バスタオル一枚を身に纏っているだけだったのだ。
「なんて格好してるんだよ!?」
あまりにも予想外すぎた服装に、俺は思わずツッコミを入れてしまう。
だけどよく観察してみると、髪もまだ水気を帯びているので、お風呂から上がって体を拭いている最中に笹川先生の悲鳴が聞こえ、一目散にこちらに来たのだろう。
「来斗君は静かにしてて?」
よほど怒りで我を忘れているのか、美咲は自身の服装を恥じらうことなく、俺に対して笑みを向けてきた。
その背後には、どす黒いオーラのようなものが見えた気がする。
うん、格好以前に美咲を止めないと笹川先生がやばそうだ。
「落ち着け美咲……! 笹川先生のこれは――!」
「大丈夫だよ、来斗君。私、ちゃ~んとわかってるから」
事情を説明しようとすると、美咲は笑顔のまま小首を傾げる。
おかしい。
言葉通りなら誤解が解けたということのはずなのに、俺の体から冷や汗が流れてきた。
「わかってくれたのか……?」
「うん、どろ――お姉ちゃんに襲われたんだよね? ちゃんとわかってるから、安心して?」
わかってないじゃないか……!
反射的にそうツッコミそうになるが、今の美咲は怒りで我を忘れているようなので下手に突くわけにはいかない。
刺激を与えると何をしでかすかわからないのだ。
一つわかるのは、この冷や汗は間違いではなかったということだった。
「違う、笹川先生は驚いて俺に抱き着いてきただけだ」
姉のことを泥棒猫と言いかけた美咲に対し、俺は刺激しないよう笑顔で説明をする。
幸いヤモリの赤ちゃんは笹川先生の声で逃げておらず、今もジッとしているので美咲も納得してくれるはずだ。
さすがに幼い頃から笹川先生と一緒にいて、姉がヤモリを苦手としていることを知らないわけがないだろうし。
「驚くって何に?」
美咲は俺の言葉を信じていないようで、再度笑顔で小首を傾げる。
なんだかんだいって、やはりこの子もあのお母さんの娘だな。
笑顔なのにプレッシャーが半端ないんだが……。
「それにだよ」
俺は美咲の頭の上で壁に貼りついている、ヤモリを指さす。
美咲はドアを開けてすぐに硬直してしまったので、ちょうど真上にいるわけなのだが――まぁ、頭の上に落ちてくるなどのベタな展開は起きないだろう。
彼女は俺の指先を追うように、視線を真上へと向ける。
そして、赤ちゃんヤモリとバッチリ目が合うと――
「きゃあああああ!」
――まるでデジャヴかのように、涙目になりながら一目散に俺に突っ込んできた。
「君もか……!?」







