第143話「とんでもない誘い」
「――お風呂、本当に先に頂いてしまってもよろしいのでしょうか……?」
晩御飯の片付けが終わった後、笹川先生が申し訳なさそうに俺の顔色を窺ってきた。
「はい、いつも心愛を一番に入れているので、一緒に入って頂く笹川先生が一番でかまいません」
普段は俺が心愛をお風呂に入れているのだけど、笹川先生がいる今となっては心愛が一緒に入りたがるのは彼女となる。
そのため、笹川先生に最初に入ってもらうのだ。
「すみません……」
「気にしないでください。むしろ、妹をお任せしてすみません」
笹川先生が家に来てから心愛がいっさい離れないというか、美咲の家にいた時から笹川先生に心愛を任せきりなので、正直申し訳ない。
心愛はよく寝る子なため、丸々笹川先生が相手をしていたわけではないと思うが、負担は大きいだろう。
……いや、美咲の相手をしていたからわからないけど、笹川先生がいることによって心愛が興奮して、今日は寝ていない可能性だってあるのだが……。
「せんせぇい、いこ……!」
俺が頭を下げると、心愛が笹川先生の服をクイクイッと引っ張ってお風呂場に連れて行こうとする。
このままだとお互い謝っての繰り返しになりそうなので、もうお風呂場へと行ってもらうことにした。
そして、彼女たちがいなくなると――。
「私たちは、来斗君のお部屋に戻ろっか?」
美咲が、期待したように俺の腕に抱き着いてくる。
俺の部屋で甘える気満々のようだ。
晩御飯を終えてすぐに歯磨きもしていたし、準備万端なのだろう。
もちろん、俺もこの後の流れを察して歯磨きは終えている。
「心愛たちが出たら、美咲が入ってくれたらいいから」
俺は美咲と共に自分の部屋を目指しながら、彼女にそう伝える。
すると――彼女はピタッと足を止め、俯いてしまった。
何やら俺の腕に自身の腕を絡めたまま、モジモジと指を合わせ始める。
「どうかしたか?」
「その……お姉ちゃんたちが、お風呂から出たら……多分、お姉ちゃんが寝てる部屋に……行くと思うの……。心愛ちゃんを、寝かせないといけないし……」
「……だから?」
俺は美咲が何を言おうとしているのかなんとなく察してしまったのだが、さすがに違うと思って尋ねてみる。
しかし――
「ら、来斗君が望むなら、わ、私は……一緒に入っても……いいよ……?」
美咲は、顔を真っ赤に染めた上目遣いで、とんでもないことを言ってきたのだった。
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