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第14話「天然な彼女」

「――来斗君、今度の土曜日にデートできないかな……?」


 昼休み、美咲の手料理に舌鼓を打っていると、彼女が上目遣いで顔を覗き込んできた。


 顔が近い……。


 ちなみに、彼女は既に食事を終えている。

 もちろん俺が食べさせた。


「周りを信じさせるために、だよな?」

「うん……早い段階で、みんなの前でデートをしてたほうがいいと思って」


 美咲の考えはわかる。

 未だに、俺たちが付き合っているかどうか疑っている人は多いんだ。

デートさせるところを見せて、早めに信じさせたほうがいい。

 学生がよく行く場所でデートしていれば、誰かしらの目には留まるだろう。


 ただ――。


「悪い、先に聞いとくべきだったんだが……デートする時は、心愛も一緒で大丈夫か?」


 母親に代わり、普段俺が心愛の面倒を見ている。

 それは、休日も変わらないのだ。


 日曜日は母さんの仕事が休みだけど、週六日――それも昼から夜遅くまで働いているので、体を休められるように俺が家事などをしている。

 休息の母さんに、心愛の面倒を任せるのは悪いだろう。


 ということで、土曜日でも日曜日でも変わらず、心愛は一緒になる。

 デート相手としては、嫌がりそうだが――。

 

「もちろん、いいよ。私も心愛ちゃんと話したいし」


 子供好きの美咲にとっては、むしろ嬉しいのかもしれない。

 こういう点は、俺たちの相性はいいのだろう。


「ありがとう、心愛も喜ぶよ」

「ふふ、そうだといいなぁ。心愛ちゃん、かわいいもんね」

「天使だからな」

「あはは、ついに天使になっちゃった」


 今までは『まるで』とか、『みたい』と言っていたから、今回断言したのがおかしかったらしい。

 だけど、本当に心愛は天使なのだ。

 あの子のかわいさに触れればわかる。


「かわいいんだから、仕方がない」

「来斗君って全然デレそうにないのに、本当に心愛ちゃんにはデレデレだよね」

「それはちょっと違うような?」


 デレデレというほど、顔に出したりしない。

 その代わり、凄く甘やかしているかもしれないが。


「私も、来斗君みたいなお兄ちゃんがほしかったかも」

「新手の口説き文句か?」

「彼氏をわざわざ口説く必要がありません」


 茶化してみると、笑顔で返されてしまった。

 こういうところはさすがだな。


 鈴嶺さんが絡むとポンコツになるのは、彼女相手に何かトラウマがあるのだろうか?

 だから、焦って変な行動をするのかもしれない。


 そう思ったけど、確かめるわけにはいかなかった。

 どこで鈴嶺さんが聞いているかわからないからな。


「私は本気で思ったこと言ってるのに、茶化すのは良くないと思う」

「悪い、全然本気に聞こえなかったから」

「酷いなぁ。来斗君を見てたら、みんなお兄ちゃんになってほしいと思うよ?」


 そんなわけがない。

 俺のクラスでの嫌われようは知っているだろうに。


「まったく事実にそぐわないお世辞は、言われても嫌なだけだぞ?」

「自己評価が低すぎない? もっと自分に自信を持ったらいいのに……」


 美咲は溜息を吐きたそうにしながら、物言いたげに俺の顔を見つめてくる。

 そんな呆れたような顔をされてもなぁ……。


「みんなから嫌われている奴に言うセリフか、それ?」

「みんな、見る目がないんだよ」

「周りからすると、見る目がないと思われているのは美咲だけどな」


 実際、そういった声は嫌というほど聞こえてくる。

 一人対大多数なら、どっちが正しいかは明白だろう。


「私は、みんなと見てるところが違うんです……! 表面じゃなくて、中身をちゃんと見てるんです……!」


 俺が言ったことが気に入らなかったのか、プンプンと怒り始めた。

 ムキになるほどでもないと思うんだが……。


「顔は悪いけど、性格はいいってことか?」

「そういういじわるな取り方するのは、よくありません……!」


 なんでさっきから敬語なんだろう?

 癖なのか?


「でも、そういう言葉に取れるだろ?」

「言いたいことわかってて、わざと()げ足を取ってるよね!?」


 あっ、タメ口に戻った。

 説教の時は敬語になる感じか。


「さぁ、俺にはそういうふうに聞こえたけど?」

「むぅ……!」


 今度は、頬をプクッと膨らませ始めた。

 拗ねているのはわかるが、子供のように見えてしまう。


 普段とのギャップがあって、ちょっとだけかわいいと思ってしまった。

 本当に、ちょっとだが。


「いじわるは良くないです……!」

「わかったわかった。本音が漏れただけだよな?」

「全然わかってない……! どうして本音の話になるの……!?」


 なんだろう?

 ちょっと楽しくなってきた。


「私が言っているのは、わざと周りを突き離そうとしている来斗君しかみんなは見てなくて、気遣いができて困った時には助けてくれる来斗君のことを見てないってことです……!」


 (あお)りすぎたせいか、美咲がグイッと顔を近付けてきた。

 お互いの息がかかる距離に顔が来てしまうが、怒っている彼女は気にしていないらしい。


「俺は人によって態度を変える人間ってだけだ。あいつらに優しくすることはないんだから、あいつらが俺に対して抱いている印象が正しい」


「私が困ってた時は助けてくれて、優しくしてくれた……!」

「優しくしてるってのは、美咲の勘違いなんだが?」


 少なくとも、俺は優しくしているつもりがない。

 心愛と美咲に対する態度の違いが、その証明だ。


「なんで、そこまで認めようとしないの……!?」

「事実を言っているだけだが?」

「むぅ……!」


 再び、美咲は不満そうに頬を膨らませる。

 だけど、先程より膨らみ具合が大きい。

 よほど気に入らなかったようだ。


「美咲が怒る必要はないだろ……?」


 これ以上はまずいと思い、なだめることにした。

 彼女とは友好的な関係でいないといけないんだから、下手に揉めるわけにはいかない。

 まぁ、困るのは彼女のほうだろうけど。


「だって、来斗君が自分を過小評価するから……!」

「それで美咲が怒る必要性が、どこにあるんだ?」

「…………」


 先程より噛み砕いて質問すると、美咲は黙り込んだ。

 何か反論の言葉を考えているのかもしれない。


 そして――。


「確かに……?」


 困ったように小首を傾げてしまった。

 彼女自身、よくわかっていないようだ。


 やっぱり美咲って、天然なところがあるよな……。

話が面白い、美咲がかわいいと思って頂けましたら、

評価をして頂けますと幸いです(≧◇≦)

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