第114話「躾?」
「――お待たせ」
顔を洗って歯磨きも終えた俺は、自分の部屋に戻って美咲に声を掛ける。
しかし――。
「すぅ……すぅ……」
美咲は、心愛の隣で寝息を立てていた。
待っている間に寝てしまったらしい。
「眠たかったのは本当だったんだな……」
昨日夜遅くなってしまった上に今日は早起きをしていたようなので、それも仕方がない。
「…………」
俺はベッドに近付き、かわいい彼女の寝顔を覗き込む。
ここ最近子供のような美咲を見てばかりいるけれど、こうして見ると眠り姫のように美しい。
男子たちがこぞって彼女にのめり込むのもよくわかる気がする。
「仲良し姉妹みたいだな」
気持ち良さそうに並んで寝ている心愛と美咲を見ていると、本当の姉妹のようにも見えた。
心愛は目に入れて痛くないほどかわいく、容姿も美咲に劣っていないのでそう思う。
この子は将来絶対に美人になるだろう。
そんなことを考えながら、かわいい妹の隣で寝ている美咲の頭に手を伸ばすと――
「んぅっ……」
――触れた瞬間に、美咲の体がピクッと動いた。
あれ、この反応――。
そう思った時にはもう遅く、目の前で横になっていた彼女の体が突然勢いよく起き上がる。
直後、唇にしっとりとしたものが押し付けられた。
「あむっ」
「――っ!?」
油断していた俺は、予想外の事態に体が強張ってしまう。
そして口の中では、自分の舌に外から入ってきた舌を積極的に絡められる。
目の前では、目を瞑りながらご機嫌そうにしている彼女の顔があった。
「――えへへ、これは読めなかったでしょ?」
息継ぎのために口が離れると、いたずらっ子のような表情を浮かべて美咲が嬉しそうに俺の顔を見てきた。
どうやら先程のことを根に持っていたらしい。
寝たふりをして俺が油断するのを待っていたようだ。
「心愛が傍で寝てるっていうのに……」
「大丈夫だよ、まだ朝早い時間だからこれくらいじゃ起きないと思うもん」
確かに心愛は中々目を覚まさない。
眠りが深い子なので、大騒ぎをしない限りはこの時間に起きることはないだろう。
しかし――万が一、というのもある。
昨晩も珍しく目を覚まして母さんを困らせていたようだし。
「寝ているとしても、心愛がいる時は駄目だ」
「むぅ……」
注意をすると、美咲は先程と同じように子供みたいに頬を膨らませる。
仲良くなり始めた頃からちょくちょく見かける仕草ではあるのだけど、逆に言うとそれまでは見たことがないものでもある。
きっと彼女の中で、甘えられるような親しい関係の相手にしかしないのだろう。
そして最近よく見るようになったのは、こうすれば俺が折れたり甘やかしたりすると思っているのかもしれない。
「それと、今日の分はもうおしまいだな」
「なんで……!?」
少し意趣返しをしてみると、美咲の頬は瞬く間にしぼみ、信じられないものでも見るような目で俺の顔を見てきた。
よほど衝撃だったらしい。
「心愛がいるのにしたから」
「そういういじわる、しなくてもいいと思う……!」
美咲はグイグイと俺の服を引っ張って不満をアピールしてくる。
必死になりすぎだ。
おかげさまで
『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』
1巻の重版&2巻続刊が決定しました!!
発売1週間で重版が決まったのですが、
それだけ売れてるってことです!
いつも応援をして頂き、ありがとうございます!
この勢いのまま、アニメ化してほしいです!!
是非是非、
これからも楽しんで頂けますと幸いです♪