第104話「二度あることは三度ある?三度目の正直?」
「…………」
美咲からおねだりをされた俺は、思わず黙り込んでしまう。
思った以上に直球できたな、という感じだった。
元々求められていたことだし、邪魔が入らなければしていたことだから、彼女は最後にしておきたいんだろう。
とはいえ――二度あることは三度あるというので、俺はチラッとドアのほうを見る。
――このタイミングでドアが開くような気配はなさそうだ。
一応耳をすませてみるも、笹川先生の足音は聞こえない。
多分、このタイミングで来ることはないと思う。
三度目の正直だと信じ、俺は美咲の頬に手を添えた。
「――っ」
目を閉じていたことで俺の行動は見えていなかった美咲が、わかりやすく体を跳ねさせる。
明らかに体には力が入っており、ガチガチだ。
初めてのことだし、緊張しているんだろう。
俺は美咲の頬を優しく撫でてみる。
「んっ……くすぐったい……」
言葉にしているようにくすぐったかったようで、美咲は俺の手を止めるように肩を上げて頬と肩で手を挟んできた。
だけど、自身の手で俺の手を止めようとはしない。
撫でられるのが好きなようなので、おとなしく撫でられることにしたんだろう。
とりあえず、まだ体は硬いようだけど表情からは硬さが消えた。
俺は撫でる手を止め、ジッと美咲を見つめる。
それにより、俺が次する行動も美咲はわかったようで、美咲は目を開けて熱っぽい瞳を俺に向けてきた。
見つめ返すと彼女は恥ずかしそうに目を閉じ、再び顎を上げて唇を突きだしてくる。
待ちの構えになったことで、俺は再度手を美咲の頬へと添えた。
だけど、もう先程のように撫でたりはしない。
俺はゆっくりと彼女の唇に自分の唇を近付け――二人の口が重なる直前に、目を閉じた。
「――んっ……」