第100話「お預け終わり」
「白井さんが保育園にこられる時はいつも制服だったので、美咲と同じ学校だということはわかっていたんです」
笹川先生は楽しそうに笑ったまま、俺と美咲が同じ学校だというのを知っていたことを話してくる。
俺たちの学校の制服はブレザーであり、学校の行き帰りに心愛を迎えに行っている俺は当然制服姿だったので、そこで気が付いていたようだ。
まぁ妹と同じ学校の制服を着ていれば、気にもなるのか。
「美咲が周りに一線を引いてしまう子だとはわかっていましたが、根が極度の甘えん坊だとも知っていました。ですから、年齢の割に結構大人びて落ち着いた性格をされている白井さんと、相性がいいんじゃないかと思っていたのです。心愛ちゃんに接する態度を見ていて、面倒見がよく甘やかし上手な方だということもわかっていましたし」
どうやら俺は、笹川先生に目を付けられていたようだ。
普段送り迎えの際に結構話しかけてくれていたのも、それでなのだろうか?
「もしかして、付き合っていなければ俺たちの間を取り持つつもりでしたか?」
妹と相性がいいと思っているなら、そう考えていてもおかしくはない。
妹が一線を引く子でもあるので、放っておいたら俺たちが仲良くなることはないと思うのが普通だろうし。
「難しいところですね。望んではいましたが、私が間に入ろうとするときっと、美咲には疑われますし」
まぁ何かしらの裏があるとは思うだろうな。
笹川先生の性格がいいことは当然美咲も理解しているだろうから、それよりも面倒見がいい性格――お節介を焼いてきた、と考えてもおかしくはない。
……いや、実際この場合は、お節介だろうし。
「そういう勘は、良さそうですもんね」
防衛本能が強いというか、逃走本能が強いというか。
他人が策を巡らせて囲おうとした時、敏感に察して逃げそうだ。
「それと、氷華ちゃんもいますしね。あの子は幼い頃から美咲の面倒を見てきたので、庇護意識が強いと言いますか――多分、私が勝手に誰かと美咲をくっつけようとしたら、怒ります」
うん、それはよくわかる。
鈴嶺さんは美咲に過保護だからな。
付き合い始めたという話が出た時も、夜にもかかわらずわざわざ俺の家にまで来たくらいだし。
それだけ美咲が大切なんだろう。
「同い年に庇護意識というのも、ちょっとおかしいですけどね」
「氷華ちゃんも、白井さん同様年齢の割に、大人びた性格をしていますので」
暗にそれは、《お前も庇護意識が強いだろ》と言われているのだろうか?
確かに、美咲が年齢の割に幼い性格を見せることが多いから、つい庇ったり守りたくなることはあるが……。
そんな話をしていると――。
「お姉ちゃん、ご飯できたから食べて」
美咲がやってきた。
先程までご機嫌そうに料理をしていた彼女は、なぜか今は若干頬を膨らませながら俺の腕に抱き着いてくる。
「来斗君は、お姉ちゃんが食べ終わるまで私のお部屋に行こ?」
そう言って、グイグイと腕を引っ張ってくる美咲。
姉と引き剥がそうとしているようだ。
……いや、二人きりになって甘えるつもりだろうか?
「一人で食事は寂しくないか……?」
「二人から見られているほうが、食べづらいので」
美咲のことを優先しようとしたのか、俺の疑問に対して笹川先生が答えてくれた。
気を遣ってくれたのかはわからないけど、ここはお言葉に甘えたほうがいいか。
そうしないと、また美咲の不満が爆発しそうだし。
とはいえ――いろいろとお預けにしてた分、ここで二人きりになるのも少し怖いな……。
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