05話 多数相手の立ち回り
ストーンゴーレム、オークジェネラル。
2体の魔物が目前に詰め寄る。
――速いっ!?
ストーンゴーレムが攻撃態勢に入り、
俺の頭へと横殴りの一撃を放つ。
喰らえば致命傷不可避!
「はぁあああっ!」
タイミングを合わせてダガ―を振り切る。
――《カウンター!》
パァンッ!
巨体は無言のまま爆散した。
それを目の端で確認し、迫る戦斧をスウェーでかわす。
――よしっ!
後ろに倒れつつ、俺は片手を着いて跳び起きた。
『ガァアア!』
滅多やたらと戦斧を振り回してくるが、ダガ―で難無く受け流していく。
「しつけーなっ!」
いなす度に耳障りな金属音が周囲に響いた。
――体力底なしか?
だが所詮は力任せの脳筋でしかない。
その攻撃は単調だった。
「もう見切ってんだよ!」
『ガアァアア!』
――ここだっ!
大上段からの大振りに、右手のダガ―を素早く合わせる。
双方の刃が触れた瞬間、
――《カウンター!》
バキンッ!
『ウァアッ!?』
斬ッ!
オークジェネラルは驚愕の表情のまま、斬られながら吹き飛んでいった。
ストーンゴーレムの残骸にグチャリとぶつかってズルリと落ちる。
「終わったか?」
俺は警戒しながら近寄った。
念入りに確認したが、動き出す気配はない。
どうやらこと切れたようだ。
「2体相手でもギリギリやれそうだな」
戦ってみて分かった事がある。
攻撃を「待ち受ける」よりも「勢いをつけて受ける」方が高威力という事だ。
つまりカウンターは、受け方の違いによる威力の振れ幅が大きい。
合わせるタイミングとしては難しくなるが、なるべく「攻撃的なカウンター」での高ダメージを狙っていくべきだろうな。
それを何時如何なる時でも繰り出せるようになれば合格だ。
とはいえ、今はまだ相手の大振りに合わせるだけで精一杯だが。
「スキルの熟練度次第か」
地道に修練を続けていけば、そのうち解決していくだろう。
「レベルはどうだ?」
冒険者カードを引っ張り出して確認する。
【ライル・グローツ】
職業:盗賊
武器:短剣
LV:21
HP:90/110
MP:7550/8250
今まではレベル20だったが、ソロ討伐で21に上がったようだ。
HPは常識の範囲内だがMPは尋常じゃなく高い。
無駄にスキルを乱発しない限りは、MP枯渇の心配は皆無なはずだ。
「スキルレベルは――」
使い慣れたスキルのレベルは40を超えているが、憶えたてのカウンターだけは2だった。
スキルレベルは理解度や熟練度に応じて上がっていく。
とにかくスキルを使い続けて、慣れていくのが上達の早道だ。
「さてと」
俺は身に着けた革の道具入れからナイフを取り出した。
雑多な用途で使っている代物だ。
高価な品ではあるが、戦闘用のダガ―よりも小振りで使い勝手が良い。
「とりあえずは食料と水の確保だな」
死んだ暗黒大蛇の元へ行き、何度かナイフを突き立てる。
落下時に潰した部位からは刃が通るが、鱗に守られた他の部位には、なかなか刃が通らなかった。
「一応、食用ではあるらしいが」
得られたモンスター情報では「食用:〇」となっていた。
食っても最悪腹を壊す程度で、死にはしないだろう。
ザクザクと切って20センチ四方のブロック肉に加工した。
匂いはキツイが、水で洗えば食えないこともなさそうだ。
「生食は勘弁だが、この際しょうがないな」
火を使うアイテムはカンテラしか持っていない。
そんなもので肉を焼いたら、あっという間に油切れになるだろう。
今までは、火が必要になれば魔術師のダンログがいたが。
「火か……ダンログは火責めにでもしてやるか?」
――その方が面白いかもな。
「あいつもミーナと同じように――っく!」
頭がズキリと痛んだ。
これ以上は考えられず、しばらくの間立ち尽くす。
「っは」
唐突に笑いが込み上げた。
痛みが続く限り、怒りを忘れずに済むからだ。
「はははははっ」
何故だか笑いが止まらなかった。
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