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46話 闘いの後

「大人しくするなら命だけは助けてやるよ」

「馬鹿な。馬鹿な。馬鹿な。私は新たな創世神だ! 始原の神なのだぞ!」


 かなり動揺しているようだ。

 その影響を受けたかのように、老人も女戦士も大男も消えていく。

 こいつの持ってる不死属性とやらは、自身の精神状態に大きく左右されるらしい。


「とんだ欠陥品の神だな」


 ブラックドラゴンと共に過ごし、暗黒炎のブレスをこの身に受けたからこそ分かる。こいつはギザラムよりも遥かに弱い。


「私は……私は、万物の――」


 男はブツブツと呟きながら立ち上がる。

 そして夢遊病者の如くフラリと歩き、突然プツリと糸が切れたように倒れ込んだ。


「くたばりやがったか!」


 唐突に声が響いた。

 俺の良く知る忌まわしき声だ。


「シュナイザーか?」

「ああ。俺はシュナイザー・タハムだ」


 そう言ってシュナイザーは素早く立ち上がった。

 この口調は間違いなく本人だ。

 身体の主導権を創世神から取り返したとみて間違いないだろう。


「お前の自我は消えなかったんだな」

「消えねーよ。あいつは俺の存在を消そうと躍起になっていやがったがな」


 シュナイザーは地面に唾を吐き捨てる。


「この俺を舐め過ぎだっての」

「ガーロンとダンログはどうなったんだ?」

「知るかよ。死んだんだろ?」


 如何にも「どうでもいい」といった感じだ。


「ライル。お前には礼を言ってやりたい気分だ」

「礼だと?」

「ああ。おかげで俺は自由になれた」


 シュナイザーは口角を上げる。


「あいつは自信を打ち砕かれて消えやがったよ。神のくせに脆い奴だ」


 そう言って肩をすくめる。


「力は俺が搔っ攫ってやったから別にいいけどな。まあつまり、全て丸く収まったって事だ」

「へぇ。こっちは全然丸く収まってないんだが?」


 俺はシュナイザーの眼前にダガーを突き付ける。


「お前の断罪がまだ残ってるだろ?」

「残念だったなライル。諦めろ」

「何だと?」

「もう二度と会わないってこった。じゃあな!」


 シュナイザーは大きく飛び退いたが、特に何も起こらなかった。

 その様子にシュナイザー自身も困惑しているようだ。


「残念だったねシュナイザー君。諦めるしかないよ。《帰還魔法》は無効だからね。ついさっき君に《スキルブレイク》の応用版を使ってみたんだ」

「なっ!?」


 唐突に突き付けられた事実に、シュナイザーは言葉も出ないようだ。

 クリフさんは、シュナイザーが逃げに徹する事まで想定していたんだろう。


「逃げるんだろ? やってみろよシュナイザー」

「くっ」


 しかし俺達は1分と掛からずにシュナイザーを追い詰める。

 そうして苦労する事なく、アッサリとシュナイザーを捕らえて拘束した。


 △


「最悪の事態も回避されたし、まずは良しとしようか」


 俺達は顔を見合わせて頷いた。

 最上の結果と言って差し支えないだろう。


「呆気なかったですわね」

「そうだな」

「そうだね」


 3人の意見は一致している。

 神といえども、まだ誕生したばかりだったからな。

 弱い力しか持っていなかった。


「神話の登場人物達も、長い年月を掛けて研鑽を積み、力を増していったんだよ」


 クリフさんが見解を示した。

 ブラックドラゴンのギザラムも、気が遠くなる程の時間を掛けて「神話の古竜(エンシェントドラゴン)」と呼ばれるまでの存在になっている。


「若過ぎる神だったのが、俺達にとって不幸中の幸いだったんですね」

「そうだね」


 クリフさんは柔らかい表情を見せたが、一転して険しい顔になる。


「だけどこの国は国王不在となってしまったからね。上位の貴族達や魔術師の名家も、有能な子息達を多数失っているし」

「他国にとって、格好の侵略先となってしまいましたのね」


 ダンログは「国が千年も続いているのは特別な力が働いているからだ」と言っていた。


 だがこんな酷い状態になってしまった今、その特別な力とやらが国を守ってくれるかどうかは分からない。


「早急にどうにかしないとね」


 国の危機を放置しておく訳にもいかない。

 復讐だけに力を注ぎ、それ以外をおざなりにするのは間違っている。

 今回の事態を招いたのは俺達だから、その責任は取らなければいけないだろう。


「まずは、このアルトスの街の復興を手伝おうか」

「「はい」」


 今回の事態について、クリフさんなら上手い具合に街の評議会へと説明してくれるはずだ。


「行きましょう」


 俺達は街の住人の避難区域へと足を運んだ。

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