表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/49

39話 強行突入

「僕が転移魔法を使えれば、移動はもっと楽なんだけどね」

「やっぱり難しいんですか?」

「かなりね。帰還魔法の発展形が転移魔法だからね」


 転移先を1箇所に限定するのが帰還魔法だ。

 複数箇所を渡る転移魔法との間には、難易度的に超えられない壁があるらしい。


 約6日の旅程で、俺達は馬車の中で様々な事を話し合う。

 そして到着した時には、城壁外に数万の軍勢がひしめいていた。


 王国軍に「神柱の種」が与えられるのであれば、その後に待っているのは他国への侵略だ。

 世界の勢力図は大きく塗り替えられて、争いの火は大きく広がってしまうだろう。


「街の住人は避難してるみたいだね」


 街から大きく離れた場所には、無数のテントの様なもの(棒を突き立てて布を張っている?)が見える。

 王国軍によって街から追い出されたのだろうか。


「魔術師の塔が……ありませんわね」


 するとティリアは、ハッとしながら真剣な顔で振り返る。


「『塔は崩壊して瓦礫になっている』と、精霊達が囁き合っておりますわ」

「崩壊した?」


「ええ。塔の姿もここから見えませんし、正しい情報ではないかしら」

「そこまでやるのか……」


 クリフさんは悔しそうに唇を噛んだ。


「邪魔を防ぐ一番の方法は、地下へと通じる道を封鎖する事だからね」


 だからわざわざ崩壊させたのか?


「ダンログ君は研究は終わったと言っていた。魔術師の塔を存続させておく必要性が、もうないんだろう」


「じゃあ俺達には打つ手なしって事ですか?」

「誰にも見つからずに塔の瓦礫を撤去して、地下に潜り込めればいいんだけどね」


 残念ながら、そんな方法はない。

 あえて言うなら、派手な魔法で地上の瓦礫を吹き飛ばすくらいだが。


「とりあえず行ってみるかい?」

「そうですね。それしかないですし」


 不審者として取り囲まれる恐れはあるが、俺達の実力なら切り抜けられる。

 そう納得して、俺は盗賊スキルの《隠密(ハイディング)》と《消音(ミュート)》を使う。


「俺が先頭を歩きます」


 慎重に街の城壁へと近付いていく。

 潜入を決行するなら、こんな昼間ではなく夜の方が適している。


 だが残された時間がどれだけあるかも分からない現状では、そうも言っていられない。

 俺は警戒しながら進んでいった。


「城門が閉まってますね。どうします?」


 小声でボソリと訊いた。

 10m程先にある城門の両サイドには、槍を持った兵が立っている。


「フック付きロープで壁を昇りますか?」

「まずは《眠りの雲(スリープ)》で眠らせよう」


 それもそうだなと納得し、俺は目線で肯定した。


「《眠りの雲(スリープ)》」


 フワリフワリと雲が飛んで兵士達を包み込むが。


「な、なんだこの霧は!?」


 眠りに落ちずに騒ぎだした。

 明らかに魔法が効いていない。


「仕方ないね。魔法で城門を破るから、走り抜けて一気に突破しよう!」

「はい!」

「分かりましたわ!」


「《火球(ファイヤーボール)》」


 熱された大火球が撃ち出される。

 城門に大穴が空いた事を確認し、俺達は一斉に走り出した。


「おい! 燃えているぞ!」

「敵襲か!?」


 突然の事に恐慌をきたす兵士達。

 だが《消音(ミュート)》のスキル効果で、その声が他者に届く事は無い。


「《水球(ウォーターボール)》」

『うあぁああああ!』


 水の魔法で城門の火は消えた。

 驚く兵士達を尻目に、俺達は一気に駆け抜ける。

 止まることなく路地裏を走り続け、安全を確認してから物影に隠れた。


「眠りの魔法が効きませんでしたね」

「はぁ、はぁ……門番だからね。体質的に、そういった耐性のある人間が選ばれているんじゃないかな」


 なるほど。

 状態変化に強い特異体質か。


「街の皆様は、ここにはおりませんのね」


 ティリアはひょっこりと壁から顔を出して、周囲を見回している。


「全員避難してるなら、その方が好都合だ。戦いになったら巻き添えになるからな」

「そうですわね。誰も犠牲にならない事を祈りますわ」


 ティリアは固い表情で手を組んだ。

 そして俺達は、魔術師の塔へと向かって歩いて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ